日銀は政策維持、「無制限」前倒し提案否決:識者はこうみる

日銀は政策維持、「無制限」前倒し提案否決:識者はこうみる
3月7日、日銀は追加緩和を見送った。写真は昨年11月、都内の日銀本店ビル(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)
[東京 7日 ロイター] 日銀は6、7日に開いた金融政策決定会合で政策金利の据え置きを全員一致で決定し、追加緩和を見送った。白井さゆり委員が無期限買い入れの早期導入と金融調節上の必要性から実施している国債買い入れ(輪番)を統合する案を提出したが、反対多数で否決された。
市場参加者のコメントは以下の通り。
●基金と輪番統合、新体制でも時間かかる印象
<SMBC日興証券 債券ストラテジスト 岩下真理氏>
資産買い入れ基金について、白井さゆり委員が2014年導入予定の無期限買い入れ(オープンエンド)の早期導入と紙幣(日銀券)の発行量に合わせた国債買い入れ(輪番)を統合する案を提出した点は目新しさがあった。ただ、反対多数で否決された。財政ファイナンスと受け取られないようにする区別の仕方で問題点があったようだ。
統合は新体制でも議論されるだろうが、きょうの段階で反対多数なので、時間がかかりそうな印象を受ける結果だった。長い目で見ると統合する方向で考えることも想定できなくはなかったが、新体制でも目先できるのはオープンエンド状況で、年限長期化や増額になるのではないか。
景気判断の上方修正は予想通りだが、「生産」よりも「輸出」の判断が遅れている。このズレがどうなるか4─6月で見極めることが重要と受け止めている。
●レジームチェンジ実現可能性高まる動き出始める
<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>
日銀が新体制でどういう政策を打ってくるかを見る上では、正副総裁候補の主張のみならず、審議委員が「レジームチェンジ」に対してどういう投票行動をとってくるかという読みが大変重要になっている。
これまでは宮尾委員が時間軸の再明確化を目指すなど、リフレ派に近い主張をしていたので、賛成票は総裁候補の黒田氏、副総裁候補の岩田氏、それに宮尾委員で3票は読めた。これに副総裁候補の中曽氏がマイルドなものを持ってくるにしても、まだ4票だった。
これに対して、今回の会合では白井委員がオープンエンドの前倒しと輪番との統合という、所信聴取で出てきた話に乗る議案を出しているので、どうやらもう1票増えそうで、その意味ではレジームチェンジの実現可能性が高まる動きが出始めたということではないか。
ただ、中曽氏については必ずしも他の(候補)2人に同調するとは限らない。ある意味、日銀の伝統的な考え方の防波堤のような役割も担っているわけで、すべてリフレ派に同調するというのもなかなか考えにくい。今後は残りの審議委員の意見の変化の有無に加えて、中曽氏の動向にも注意が必要だ。

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