焦点:「ネット未開地」アフリカ、グーグルなどが新技術で競争

焦点:「ネット未開地」アフリカ、グーグルなどが新技術で競争
11月10日、米グーグルやマイクロソフトは、アフリカ大陸全域に安価なブロードバンドを提供できる可能性があるサービスの実験プロジェクトを進めている。写真はケープタウンにあるエルスウッド中等学校のコンピュータールーム。7日撮影(2013年 ロイター/Mike Hutchings)
[ケープタウン 10日 ロイター] -南アフリカのケープタウンにあるエルスウッド中等学校では、金属板で建物が守られているにもかかわらず、インターネット回線に使われる銅線の盗難が後を絶たなかった。しかし、利用されていないテレビ放送用周波数帯「ホワイトスペース」を活用した無料ワイヤレス通信のおかげで、生徒たちはネットを利用できるようになった。
このサービスは、米グーグルが中心となったコンソーシアムが試験的に行っているもので、米マイクロソフトも同じようなパイロット事業を同国で進めている。両社は、アフリカ大陸全域に安価なブロードバンドを提供できる可能性を秘めるこの技術をめぐり、サービスの改善を競っている。
ネットの普及という点で、アフリカは世界で最後の手つかずの巨大市場と言える。国際電気通信連合によると、アフリカでは人口約十億人のうち、ネット利用者はわずか16%。これはアジアの普及率の半分だ。
アフリカのネット利用はほとんどが携帯電話経由だが、その理由は欧米では当たり前の固定回線が少ないため。2010年にはわずか2%だったブロードバンド利用率は、今年11%まで上昇。しかし、携帯電話会社はコストがかかるアンテナ塔やネットワークを地方部にまで整備することには及び腰で、多くの人にとってはネットが利用できるようになる望みもほとんどない。
この未開の巨大市場に狙いを定めたグーグルやマイクロソフトは、ネット網がない地方や、携帯電話の受信電波が弱い大都市でホワイトスペースによるネット接続を提供しようとしている。
例えば、ジンバブエにはテレビ局が1つしかないが、放送用電波帯域が空いていることは同サービスにとって理想的な環境だ。マイクロソフトは将来の商業化を視野に、ケニア、タンザニア、南アでパイロット事業を進行中。グーグルは、南ア各地の学校で行われているテスト事業に出資している。
両社にとっての目的は、新たな顧客を安価な手段で獲得することだが、各国政府にとっても得られる成果は魅力的なものがある。世界銀行の報告によると、ブロードバンド普及率が10%拡大すると、経済成長が年率で1.4%押し上げられるという。
こうしたことから、ウガンダ教育省の広報パトリック・ムインダ氏は「できるだけ多くの周波数帯が必要だ。授業でコンピューターを学ぶ子どもは増え、eラーニング向けに購入するパソコンも増加している」と述べ、プロジェクトに前向きな姿勢を示した。
<地元ネット事業者との提携>
テレビの周波数帯は、各局ネットワーク間の干渉を避けるために余裕を持って設定されている。グーグルなどが試行する技術は、こうした隙間であるホワイトスペースを利用して、無線でデータ信号をやり取りする。
ホワイトスペースに適したテレビ電波は半径10キロの範囲に届くため、送電線網を持たない村などのネット接続に最も適している。また、テレビ電波は携帯電話の電波より壁にさえぎられにくい性質を持つ。また、低コストも利点で、ケープタウンでグーグルが出資するプロジェクトのマネージャー、アーノ・ハート氏によると、ホワイトスペース用アンテナ塔は通常の通信基地の10分の1の費用で建設できるという。
地元のインターネットサービスプロバイダーも、この取り組みに協力している。タンザニアでは、マイクロソフトがUhuruOneと提携し、ダルエスサラーム大学の生徒にネット接続サービスを提供する。今年1月には対象大学が4つに拡大され、計7万2000人以上の学生が月額5ドルでブロードバンドを利用している。
また、ケニアではインディゴ・テレコムと米国際開発庁が、西部リフトバレー州にある学校や病院、自治体の事務所に無線ブロードバンドを提供するため、マイクロソフトと協力している。
インディゴは現在、学校には無料でネット接続を提供しているが、将来的には周辺住民向けにも月額1.5ドルの有料プランを始めたい考えだ。同社は通信網やアンテナ塔、通信機器などのインフラを提供し、マイクロソフト側はソフトなどを供給する。
インディゴのピーター・ヘンダーソン会長は、「携帯電話会社が経済的に事業を始められない地域でスタートした」と説明。「われわれの事業の強みは、かつてはデジタル社会とは縁遠かった地域に低料金でネットを提供するところだ」と話す。
一方、南ア最大の携帯通信会社ボーダコムは、ホワイトスペースを活用するネット技術の動向を注意深く見ているという。広報担当者のリチャード・ボアーマン氏は「現時点では、規制の面から今後どのように管理されるのか不透明で、全体的な接続状況にどう影響するか推測するのは難しい」とも話す。
<規制当局も関心>
各国政府はこのネット技術を基本的に歓迎しているが、軍や救急サービス、空港管制に利用される周波数帯への影響や混信の可能性について懸念を示す当局者もいる。
マイクロソフトが実施するプロジェクトのコミュニケーションディレクターを務めるホイットニー・クビソン氏によると、放送局が干渉の影響を受けるのではという懸念を和らげようと、規制当局も状況を注視しているという。
マイクロソフトが名前を明かさなかったある国は、規制改革の実行にはまだ数年かかる可能性があるとしているという。
ケープタウンでのグーグルのプロジェクトは、南ア当局の支援を受けて行われている。当局はこの試験事業を将来の規制のベースとして活用し、当初9月で終了する予定だった事業の継続をグーグル側に許可した。
またグーグルによると、放送局が少なく、利用できる周波数帯が多いマラウィとセネガルの規制当局も、このネット技術に熱い関心を寄せているという。
マイクロソフトも、現在10カ国以上の政府と試験プロジェクトの開始について協議中だとしているが、国名や必要なコストについては明かしていない。
クビソン氏は「われわれの考えでは、ホワイトスペースの電波が現行の免許保持者と干渉のリスクなく共存できることが十分に証明されている」と語る。
話をケープタウンに戻すと、この試験事業に参加する学校は万事が良い結果に終わることを望んでいる。学校側は、高速で信頼できる新たなネット接続サービスを継続して使いたいと強く願っているという。
対象校の中では比較的裕福なセトラーズ高校のIT責任者ポール・ハウプト氏は、「われわれにとって機能しているのだから有料でも構わない」とし、かつてのサービスには戻れないと話した。
「(このサービスで)人生がずっと楽になったよ」。エルスウッド中学の混雑するコンピュータールームで休み時間中に宿題をしていた10年生のタイラー・ジェイコブスくんの言葉が、すべてを物語っているのかもしれない。(Helen Nyambura-Mwaura記者;翻訳 橋本俊樹;編集 宮井伸明)

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