異次元緩和の効果は想定通り、リスク顕在化なら政策調整=日銀総裁

異次元緩和の効果は想定通り、リスク顕在化なら政策調整=日銀総裁
11月5日、日銀の黒田東彦総裁は大阪市内の講演で、日本経済は日銀が掲げる2%の物価安定目標の実現に向けて順調な道筋をたどっていると語った。10月撮影(2013年 ロイター/Yuya Shino)
[大阪 5日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は5日、大阪市内で講演と記者会見を行い、日本経済は日銀が掲げる2%の物価安定目標の実現に向けた道筋を順調にたどっているとし、4月に導入した異次元緩和は想定通りの効果を発揮していると語った。
一方で、今後、上下双方のリスクが顕在化すれば、躊躇(ちゅうちょ)なく適切な政策調整を行うと述べた。
黒田総裁は、先週公表した日本経済の道筋を描いた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を踏まえ、先行きの日本経済は「2%の物価安定目標の実現への道筋を着実にたどっていくと考えられる」と語った。日銀が4月に導入した異次元緩和は、実体経済や金融市場、人々のマインドや期待などが好転しており、「想定した通りの効果を発揮してきている」と強調した。
総裁は、足元で実際の消費者物価が上昇していることが、先行きの「予想インフレ率の上昇に寄与する」と述べるとともに、大規模な国債買い入れによって長期金利は0.6%程度まで低下しており、実質金利も「低下を続けている」と語った。その上で、インフレ期待の上昇などを通じて長期金利に上昇圧力がかかっても、異次元緩和は物価目標実現まで続けるため、「その(金利上昇)程度はより小さくなる」との見解を示した。
今後の日本経済の注目点には、1)堅調な内需の持続性、2)海外経済の先行き──の2点をあげた。このうち外需について「輸出は持ち直し傾向にあるが、やや勢いを欠いている」と指摘。カギを握る海外経済は米国の財政問題や、減速する新興国・資源国経済など「各国・地域それぞれのリスク要因を抱えている」としながらも、「下方リスクが特に厚いとは思わない」と述べ、海外経済全体として「先進国を中心に、次第に持ち直していく」と語った。
一方で「海外要因はこちらでどうこうできない」と指摘。米国経済は先行き成長率を加速させていくことがメーンシナリオとしながらも、債務上限問題など財政をめぐる不透明感が残っており、「今後の展開には注意していく必要がある」と語った。こうした内外のリスクが顕在化した場合の金融政策運営では「物価安定目標の実現のために必要であれば、躊躇(ちゅうちょ)なく適切な政策調整を行う」とし、物価目標達成が困難になった場合は追加緩和を辞さない姿勢をにじませた。
経済・物価が日銀の見通しに沿って推移しているが、出口戦略については「具体的な議論は時期尚早」とあらためて表明。現状は物価目標実現に向けた「途上」とし、拙速な出口議論は「市場に雑音を与える」と慎重姿勢を示した。一方で「出口のあてもなく入り口に入ることはあり得ない」とし、「しっかり考えておきたい」と内部で検討していく考えを示した。
(伊藤純夫;編集 宮崎亜巳)
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