アングル:過激派の通信手段に変化、「スノーデン問題」の余波広がる

アングル:過激派の通信手段に変化、「スノーデン問題」の余波広がる
6月25日、CIA元職員のエドワード・スノーデン容疑者が米当局の個人情報収集活動を暴露したことで、過激派組織の通信方法に変化が生じ始めたと複数の米当局者が明らかにした。モスクワの空港で撮影(2013年 ロイター/Sergei Karpukhin)
[ワシントン 25日 ロイター] - 米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン容疑者が当局による個人情報収集活動を暴露したことを受け、情報機関などはそれによって生じた損害の規模を把握しようとしている。その一方で、複数の米当局者は過激派組織の通信方法に変化が生じ始めたとし、攻撃の阻止がより困難になる可能性を指摘している。
米国家安全保障当局の関係筋2人によると、情報機関は、監視対象となっている過激派組織の通信パターンが変化し始めたことを確認。スノーデン容疑者による監視プログラムの暴露を受けた反応とみられる。同容疑者はスパイ活動取締法違反容疑などで訴追された。
関係筋は、この変化が既に情報活動に損害を引き起こし、今後の攻撃のサインを見逃す危険性が高まっているかどうかという点について、判断するのは時期尚早との考えを示した。その一方で、「何を失うかは、実際に失ってみないと分からないものだ」とも語った。
当局者らは過激派組織による通信パターンがどう変わったかについてはコメントを控えたが、米国のある専門家によると、通信を暗号化する新たな方法が見つかるまで、インターネットなどを通じた連絡を減らしたり、携帯電話を頻繁に変更したりすることなどが考えられるという。
イスラム過激派のサイトを監視するフラッシュポイント・グローバル・パートナーズは、サイト上で米国家安全保障局(NSA)の活動に関する議論が増加していると指摘。ある投稿では「(イスラム教の)『ジハード(聖戦)』活動に使用する電子メールでは自分の情報を明らかにしないこと。偽の名前や発信元を特定しにくいブラウザの使用は不可欠だ」とコメントした。
<損害の大きさ>
世界の情報アナリストは、NSAや英国の情報機関GCHQ(政府通信本部)の監視活動についてスノーデン容疑者が暴露した内容がどれだけの影響を与えるのかを判断しようとしている。欧米の情報当局にとってダメージとなり得るのは、欧米当局による通信傍受の手段などの技術的な詳細を、ロシアや中国などが把握した可能性があることだ。
米当局者らは懸念しているのは、スノーデン容疑者が大量の機密情報を公開すれば、欧米の対テロリズム活動にさらなる支障をきたす可能性があることだ。スノーデン容疑者は現在、政府等の内部文書を公開する民間サイト「ウィキリークス」から支援を受けている。
複数の関係筋によると、米当局は既に、スノーデン容疑者の持つ機密情報が米国と対立する情報機関にすべて渡ったとする「最悪のシナリオ」を想定して行動しているという。
米英の当局者らは、NSAとGCHQによる電話とインターネットの監視活動について、計画されていた攻撃を未然に防ぎ、国家安全保障に必要だとの見解を強調している。
米国が中国の携帯電話ネットワークやメッセージをハッキングしているほか、大学サイトなどにも侵入しているとスノーデン容疑者が明らかにしたことで、米政府は来月に予定されている中国とのサイバーセキュリティ―会合で、二重基準を設けていると指摘される可能性もある。
中国指導部に近い関係筋はロイターに対し、「米国は中国がハッキングを行ったとして悪者扱いしたが、今後も道徳的優位に立ち続けられるだろうか」と述べた。一部の米国の専門家からも、こうした反応は監視プログラムが明るみに出た今、当然の結果だとする声が上がっている。
米国務省の元職員で、現在は米戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアフェローを務めるジェームズ・ルイス氏は、「われわれが聖人ぶった態度を取るのはより困難になるだろう」との考えを示した。
(原文:Mark Hosenball、Matt Spetalnick、Peter Apps、翻訳:本田ももこ、編集:橋本俊樹)
*記事の体裁を修正して再送します。

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