米金利急騰の割に上昇しなかった円債利回り、背後に生保の買い出動

米金利急騰の割に上昇しなかった円債利回り、背後に生保の買い出動
5月29日、米国債利回りが急ピッチで上昇したのに円債利回りの上昇幅が限られたのは、生命保険会社が節目の水準で国債購入に動いたためだ。写真は都内で13日撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)
[東京 29日 ロイター] - 米国債利回りが急ピッチで上昇したのに円債利回りの上昇幅が限られたのは、生命保険会社が節目の水準で国債購入に動いたためだ。
しかし、米景気回復のシナリオなどを背景に、中長期的な円安・株高トレンドが続けば、いずれ円債利回りへの波及は避けられそうにない。
「あっさり1%に乗せると思ったが」。ある国内証券のアナリストは、この日の円債市場の動きについてこう話す。前日のニューヨーク債券市場で米10年債、30年債利回りがそろって13カ月ぶりの高水準に達し、海外市場の動きが日本に波及するとの読みからだ。
ところが実際には円債利回りの振れ幅は小幅だった。JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは「朝方こそ相場が下がったが、その後はしっかり押し目買いが入った」と指摘する。別の運用関係者は「生保などが長期、超長期の国債を買っていたようだ」と話す。
国債運用をめぐって生保各社はこれまで慎重なスタンスを維持してきた。「金利が低すぎるうえ、相場変動が激しく、手が出ない」(生保幹部)ためだ。しかし、ここにきて「10年で1%、20年で1.7%なら少しずつだが買っていける水準」(明治安田生命の殿岡裕章副社長)との声も出ている。
これまで一本調子で上昇してきた株価が踊り場の局面を迎えていることも、「投資家が債券買いに傾いた一因」(前出の国内証券)とみられている。
29日午前の東京株式市場は、日経平均こそ続伸したが、買いが一巡するときょうの高値から268円下落する場面もあり、相変わらず振れ幅の大きい展開が続いた。先物主導で短期売買が繰り返されたためだ。
東洋証券の土田祐也ストラテジストは「日経平均ボラティリティ指数が36となお高水準にあり、先物主導でボラタイルな地合いが続いている」と指摘。そのうえで「前日には自律反発で戻りを試したが、(心理的な節目である)1万4000円を割り込む可能性は十分ある」とみる。
<根強い強気シナリオ、「ドル高ストーリー」は鉄板の声も>
もっとも米景気の回復シナリオからくる円安、株高の流れはそう簡単に立ち消えそうにない。実際、為替市場の関係者からはそうした見立てが多く聞かれる。
正午のドル/円は、ニューヨーク午後5時時点に比べ、小幅ドル安/円高の102円前半。前日の米長期金利急上昇の余韻で短期筋の間ではドル買いムードが漂っているものの、輸出勢による売りも散見され、ドルの上値は伸び悩んだ。
「(為替)トレーダーは株価を見ながら売買している。株が上がったら(ドルを)買って、下がったら売っている。それ以外のことは特にしてない」(ファンドマネジャー)という。他方、マクロ系ヘッジファンドはドル/円のニューロングを作り始めたとの指摘も聞かれた。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは「使い古された材料とはいえ、日本の金融緩和ストーリーは円安材料であり、需給面では貿易収支の赤字がボディーブローのように効いている」と指摘。
そのうえで「これに米景気のしっかり感が出てくると、鉄板のドル高/円安ストーリーはなかなか突き崩せないだろう。利益確定の売りや短期的な高値警戒の売りは出たとしても、すう勢的なドル安/円高を狙ってポジションを張るのは非常に難しい」と話す。

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