G7は銀行セクターの改革推進で一致、日銀の緩和策を容認する姿勢

G7は銀行セクターの改革推進で一致、日銀の緩和策を容認する姿勢
5月11日、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が閉幕し、破綻行の対応措置を推進することで合意した。英アイルズベリで代表撮影(2013年 ロイター)
[アイルズベリ(英国) 11日 ロイター] 主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は11日閉幕し、破綻行の対応措置を推進することで合意した。景気刺激に向けた日本の取り組みについては、容認する姿勢が示された。
議長国である英国のオズボーン財務相は閉幕後の記者会見で、完了していない銀行セクターの改革に関するものが討議の中心だったと明らかにした。
財務相は「『大き過ぎてつぶせない』銀行がないように、取り組みを迅速に完了することが重要」とし、破綻行の対応と納税者の保護を、世界的に一貫したかたちで行えるような体制を築くべきと述べた。
対キプロス支援は、銀行セクターの抜本改革の必要性を認識させるものとなった。
ユーロ圏の銀行同盟実現を一層支援するよう、ドイツには圧力がかかっている。単一通貨圏を強化するものとなるが、ドイツは将来の銀行支援で自国が巨額を負担するようになることを懸念している。
米財務省の高官によると、より良い銀行監督の仕組みだけでなく、バランスシートを改善し、貸し出しの状況を正常化できるようにする必要性にも焦点が当たった。「ユーロ圏関係者の間では切迫したような感じがあった」という。
ショイブレ独財務相はこれに対し、ユーロ圏危機がもはや世界経済にとっての主要リスクではないとの見解を示した。
前回の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議と同じく、日本は円の急落につながった大胆な緩和強化策に関する批判を免れた。
オズボーン財務相によると、G7は財政・金融政策は為替操作ではなく、国内問題を目的とすることを確認した。
同財務相は「われわれは為替レートを目標としない」とし、「今年のG7声明は成功だった。順守されている」と述べた。
G7会合前には、一部新興国の政策担当者などから、日本が近隣窮乏策で輸出主導の景気回復を図っており、円安が他地域の成長を阻害する可能性があるとの懸念の声も出ていた。ただ、日本に長年景気浮揚策を求めてきた手前、他の主要国も日本に強く出られない事情もある。さらに、米連邦準備理事会(FRB)やイングランド銀行(英中央銀行)が日銀と同様の金融緩和に踏み切っているという事実もある。
麻生太郎財務相は日銀の金融政策について「批判的な意見はなかった」とした。一方、ショイブレ独財務相は「集中した討議」を行ったとし、状況は注視されるべきと述べた。
ルー米財務長官は前日10日、G7開幕を前にCNBCの番組で、日本は「成長面の問題」があるものの、通貨切り下げ競争を回避するため、景気を刺激する方策は為替の国際合意の範囲内にとどまる必要があると述べ、日本が円安方向に為替を操作している兆候がないかどうか注視する姿勢を示していた。
ルー長官は「日本は長い間、成長面の問題があり、われわれも日本に対処するように働き掛けてきた。それゆえ、日本が国際合意の範囲内にとどまるのであれば成長は大事な優先課題だと私は考える」と述べた。その上で「私はただ基本原則に立ち戻っているだけで、それについては我々は注視していることを明らかにしている」と説明した。
一方、麻生財務相は同日、G7会議の1日目の討議で「長引いたデフレマインドの払しょくのために財政政策と金融政策を同時に大胆に発動するということで、政府と日銀が一体となって財政・金融政策の連携を格段に強化したことを説明した」と述べ、「各国が自国経済のために(金融緩和などを)やることに対する理解は深まりつつある」との見方を示した。
為替については「話すことはない」とし、「そういう話はしないことが世界のルール」と述べるにとどめた。
日銀の黒田東彦総裁は、日銀の政策は為替をターゲットにしているわけではないとし、為替レートは基本的に市場で決まるとの考えを示した。
また財務省高官は金融政策について、国内目的に焦点を合わせ、為替を操作すべきでないとした合意を日本は順守しているため、他国が政策を注視しても気にしないと話した。
10日のG7会合で円安に関する討議は行われなかったとも述べていた。
円の対ドル相場は10日、4年半ぶりの安値に下落。対ユーロでも一時3年ぶりの安値をつけた。
こうした円安の流れは、日本の投資家が外債へとシフトしていることも反映している。
レーン欧州副委員長(経済・通貨問題担当)は10日、記者団に「20カ国・地域(G20)、国際通貨基金(IMF)のこれまでの決定に沿って、通貨戦争に関する討議は行わないことが重要だ」と述べ、各国間の経済政策を調整する、より優れた方策について議論されると語っていた。
ショイブレ独財務相も同日、G7会合開始にあたり記者団に対し、G20が為替相場の操作によって競争力を向上させることはしないと確約したことを念頭に置いておくことが重要と指摘。日本は為替問題に対し慎重なアプローチをとることを確約していると述べていた。
<成長が焦点>
今回のG7会合では、緊縮策を緩和する必要性についても議論が集中した。ドイツや英国、カナダはこうした動きを誤ったものとみなしているが、米国やフランス、イタリアが推進している。
オズボーン財務相は債務削減と成長促進策のどちらかに焦点を当てるべきかについて、広く予想されているより意見に食い違いはなかったと述べた。
同相は「信頼できる中期的な財政健全化策の必要性」をG7全体が認識しているとした上で、「柔軟性が必要ということでも合意した」と述べた。
オズボーン英財務相はG7会議前、景気支援のため金融政策がさらに何ができるかを検討すべきと提案していたが、この呼び掛けには耳を傾けられなかったようだ。
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は11日、記者団に対し、「一段の行動の要請はなかった」と述べた。
「すべての中銀が、各々の責務の範囲内で多くのことを行ってきたのは極めて明確だ。従って(G7会議では)そのことに留意しただけだった。われわれすべてが実際に積極的に行動してきた」と指摘した。
関係者の間では、国際通貨基金(IMF)会合から間を置かずに英国が会議の開催を呼び掛けたことを疑問視する声も挙がった。
だがイングランド銀行(英中央銀行)のキング総裁は「公式声明で合意するという負担から解放され、会議の参加者の歯車が前よりかみ合っており、その結果、G7が直面する問題や課題の一部を推進するための実質的な進展があった」と述べた。
G7会合が公式な共同声明を出さず、率直な意見交換を行う場に復帰したことについては、参加者から歓迎する声が聞かれた。
IMFのラガルド専務理事は「非公式の設定では、タブーとなる議題はない」と話した。

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