インタビュー:賃上げ「ルール化」も課題=高橋・諮問会議議員

インタビュー:賃上げ「ルール化」も課題=高橋・諮問会議議員
4月11日、経済財政諮問会議・民間議員の高橋進・日本総研理事長は、前日行ったロイターのインタビューで、賃金引き上げを「ルール化」することも課題として挙げた。写真は2009年5月、都内のオフィスビルで(2013年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 11日 ロイター] 経済財政諮問会議・民間議員の高橋進・日本総研理事長は、ロイターのインタビューで、2%の物価目標達成の可否はさほど重要な議論ではなく、デフレ脱却を着実に進めることが必要だと強調。そのためにアベノミクスのシナリオに欠如している視点として、賃金引き上げを「ルール化」することも取り組み課題として挙げた。
さらに財政再建への努力も怠れないとし、「異次元緩和」による日銀の国債大量買入れで財政に甘えを生まないよう気を引き締め、金利が正常化する前に成長と財政再建への道筋をつけることが諮問会議の役割だとした。
<2%達成可否よりも、着実なデフレ解消が重要>
高橋氏は、2年で2%の物価目標を達成できるはずがない、といった議論について、「もともとハードルは高いという前提だ」として、議論のテーマにすべきでないとの立場を示した。「必要なことは、2%に届くことではなく、着実にデフレが解消していくこと。2年たって2%物価が上がるのか1.5%なのか、今議論することはナンセンスだ」とする。
デフレ解消と物価上昇基調持続のためには賃金の上昇が不可欠との認識は広く浸透しているが、アベノミクスの第1から第3の矢にこの点は盛り込まれていない。高橋氏は経済財政諮問会議議員として取り組み課題に加える考えを示した。「経済の好循環につなげていくには、賃金や雇用が増えていき、内需がよくなっていくというプロセスを今のシナリオに加えなければいけないと思う」と指摘。
「賃金引き上げをルール化していくことが一つの取り組みどころ、さらに過剰労働力を抱えている産業から成長分野にシフトさせていく仕組みが、現在のアベノミクスに描かれていない部分。それを描くことが重要だ」として、労働市場改革にも力を入れる考えを示した。
<設備投資に電機の教訓、円安でも過剰投資抑制>
アベノミクスの目玉ともいえる金融政策において、黒田東彦日銀総裁による「異次元緩和」の実施で、円安・株高が一段と進んだが、実体経済への波及についてはまだ際立った変化は見られない。
高橋氏は「景気は世界経済が昨年後半から徐々に良くなってきたという循環的な回復局面にあり、円安効果もあったところへ、アベノミクスが出てきた。本当にアベノミクス自体の効果が出るかどうか、まだ材料がそろっていない」と、判断は時期尚早だとした。「見極めはまだ早い気がする。20年以上にわたってデフレが続いてきたため、それほど短期的に効果が出るものかわからない」と、実体経済が動き出すにはある程度時間がかかるとの見通しを示した。
実体経済への波及ルートとしては、「円安効果で輸出が伸び、企業収益が改善し賃金雇用の改善により内需がよくなっていく、また企業の投資活動が活発化すること、心理的影響でデフレマインドが払しょくされていくということが考えられる」とした。
もっとも、各種調査によれば、いまだ設備投資関連指標は動きが鈍く、企業が投資を決断できるには至っていない。高橋理事長は「円安が進行したからといって、投資がすぐに動き出すわけではない」と見ている。「輸出産業にとってはリーマンショック前の07、08年は1ドル120円だったので、電機産業が過大投資をしたツケが今につながっている。円安はまだ進行するだろうが、あの時の教訓で、円安になってもそう投資が一気に出てくるわけではないだろう」と指摘。「当時のように勢いで設備投資が出てくるわけではないが、健全な投資が行われ、かつ企業収益が雇用と賃金に還元されることが望ましい」との視点が重要だとした。
政府サイドとしては、アベノミクスが企業の設備投資にまでスムーズに波及するために第2の矢、第3の矢として財政や成長戦略をきちんと打ち、企業の期待成長率をあげていくことが重要であり、それができれば、投資も動き出すとした。
<金利正常化前に財政再建を軌道にのせる>
安倍政権は100日を過ぎたが、「これまでのところ、狙い通り進んでいるが、真価が問われるのはこれからだ」と指摘。「ひとつは、成長戦略がきちんと打ち出されるか、もう一つは財政健全化という第4の矢をどのように具体化していけるか、という点」を挙げた。
ただ、日銀が異次元緩和を打ち出し、多額の国債を買い入れることで財政に甘えが生じる懸念が広がっている。この点について「長期金利が下がっているからといって財政再建に手を抜いてはいけない。デフレ脱却に向け時間を借りているという認識だ」と、政府サイドとしては気を引き締めるべきとの考えを示した。諮問会議としても「金利が正常化する前に早く財政健全化に向けた取り組みを軌道に乗せていくことが必要。財政リスクを顕在化させないために、今こそ健全化に動くチャンス。それは金融緩和によっても何ら変わらない」と述べた。
経済財政諮問会議は6月をめどに骨太方針を作成する予定だが、「今の財政健全化目標を変えず、それを達成するべく財政再建を進めることが必要」だとして、2015年までに基礎的収支の赤字を10年対比半減、20年までに黒字化という目標を変えずに達成に努力する考えを示した。財政再建と成長戦略の両立をめざし、成長のための資金をどこからねん出するかが大きな課題となるとした。
*インタビューは10日に実施しました。
(ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)

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