日銀正副総裁人事、国会同意の公算高まる

日銀正副総裁人事、国会同意の公算高まる
3月6日、政府の日銀正副総裁人事案が、国会の同意を得る公算が高まってきた。都内の日銀本店で2011年5月撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)
[東京 6日 ロイター] 政府の日銀正副総裁人事案が、国会の同意を得る公算が高まってきた。与党が少数派の参院で、野党の足並みが揃わない可能性が強まっているためで、19日の任期切れを目前に控え、日銀は正副総裁の空席を回避できる見通しだ。
総裁候補の黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁は、財務省出身であることなどを理由にみんなの党が難色を示しているが、民主党など他の野党は衆院での所信聴取に「安定感があった」(民主党幹部)などとして、同意に応じる見通し。ADB総裁の後任を日本が守れるかに疑問を呈する声もあったが、黒田氏がすでに辞意を表明し、政府も後任候補として中尾武彦財務官を送る方針を固めているため、不同意の理由は乏しくなっている。
今回の人事案で最大の焦点となるのは、副総裁候補の岩田規久男・学習院大学教授。リフレ派の急先鋒とされる岩田氏の就任には民主党で慎重論が根強いほか、日本維新の会などでも「危機対応などを含めた組織運営能力」(幹部)に疑問を呈する声が上がっており、ともに最終的な意見集約が難航している。ただ、民主党内には不同意を固めても「他党が賛成に回るので同意の公算は大きく、空席は生じない」(関係者)との声もあり、「期待に足る」(江田憲司幹事長)と前向きに評価するみんなの党に他野党、無所属の議員らが賛成すれば、過半数を得る可能性が高まる。
もうひとりの副総裁候補、中曽宏日銀理事は黒田、岩田両氏に比べて、表立った強い批判はない。衆院での所信表明で物価目標の達成時期に関する言及を避けるなど、リフレ色を鮮明にする安倍政権の人選としては「色合いが違う」(野党幹部)ものの、国際金融分野での手腕に加え、国内でも90年代後半に速水優総裁の下、日銀の信用機構課長として国会で調整を担った際に作り上げた人脈を有しているとされ、政府や与野党との連携強化が期待できるとの評価もある。
ただ現状では、来週11─12日に行われる参院での所信聴取で賛否を見極めたいとする声も少なくない。最終的な人事案の行方は流動的な面も残る。

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