アングル:貧富の格差問題、中国政府内に対立か

アングル:貧富の格差問題、中国政府内に対立か
2月8日、中国は所得格差の広がりに対処し、社会のセーフティーネットを整備するための費用に充てようと、利益を上げる国有企業の配当を引き上げる計画だが、政府内部には貧富の格差問題をめぐって一定の対立があることが見え隠れする。写真は2011年、上海で撮影(2013年 ロイター/Carlos Barria)
[上海/北京 8日 ロイター] 中国は所得格差の広がりに対処し、社会のセーフティーネットを整備するための費用に充てようと、利益を上げる国有企業の配当を引き上げる計画だ。
とはいえ、新たな配当性向は国際基準だけでなく、非国有企業の少数株主が既に得ている配当性向よりも低く、貧富の格差問題をめぐって政府内部に一定の対立があることをうかがわせている。
中国の新たな習近平政権は、貧富の格差問題に取り組む姿勢を強調している。
ただ、シティグループ(香港)の中国担当シニアエコノミスト、Ding Shuang氏は「反対意見が多く、それが、この程度の改革ですら何度も先送りされた理由の一つなのだろう」と指摘。「少なくとも前進だが、まだ水準は低い。前向きな動きといえるが、十分ではない」と述べた。
5日に発表された格差是正策では、国有企業の利益のうち政府に支払う比率を2015年までに5%ポイント引き上げるとされた。
中国の国有企業が昨年、純利益のうち配当として政府に支払ったのは5─15%。ただ、最高で20%になるとしても、香港上場の国有企業の配当性向平均23%に届かず、中国の財政省が省内で昨年検討していた50%にも程遠い水準だ。
世界銀行の分析によると、米国の事業会社が1980─2000年に支払った配当の平均は50─60%。先進16カ国における国営49社を調べた同様の分析では、2000─2008年の配当性向平均は33%だった。
公式データによると、中国政府が管理する国有企業(金融除く)の2011年における配当性向は9.0%。2010年は9.4%、2009年は7.3%だった。
<抜け穴>
格差是正策には、不動産投機筋や富裕層への増税も盛り込んだ。
1月には国家統計局が所得格差を表す代表的な指標「ジニ係数」を公表し、社会の不満が高まるとされる水準を超えていることが明らかになった。
ただ、格差是正策には、国有企業から配当として受け取った資金をどのように使うかについては明示されていない。
財政省は、こうした資金をヘルスケアや教育、年金といったプログラムに一般歳出として利用しようとしているが、大手国有企業を監督する国務院国有資産監督管理委員会(SASAC)は資金のほとんどを国有企業に還元してきた。
国有企業(金融除く)からの配当や株式売却で2011年に得た資金875億元(140億ドル)のうち、85%が国有企業に再投資された。
引き上げられる配当性向5%ポイントのうち、「一定の割合」を社会福祉向けに支出するとしているものの、JPモルガン(香港)の中国担当チーフエコノミスト、Zhu Haibin氏は「所得再分配計画は青写真を示しているだけで、具体性に欠ける」と指摘している。
資源や化学、電力、通信、たばこといった高収益セクターは最も高い配当性向が適用され、武器メーカーや郵便サービス、研究センターなどの部門は最も低いレートが適用されている。
また、地方政府が管理する公有企業の配当性向のデータは入手が難しい。高収益企業の大半は中央政府が所有しており、地方の公有企業は配当を免除されている企業も多い。
国有銀行やその他の金融機関はSASACが管理しておらず、最近の配当性向は約35%に高まっている。
(Gabriel Wildau記者 Lucy Hornby記者;翻訳 川上健一;編集 田中志保)
*配信カテゴリーを追加して再送します。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab