米大統領が富裕層向け増税で譲歩せず、共和党内の亀裂表面化

米大統領が富裕層向け増税で譲歩せず、共和党内の亀裂表面化
12月4日、オバマ大統領は、来年の税制改革の一環として税率の引き下げを行う可能性をちらつかせる一方、富裕層向けの税率は引き上げる必要があるとの立場を崩さなかった。写真は3日、ワシントンで撮影(2012年 ロイター/Larry Downing)
[ワシントン 4日 ロイター] 年明けに減税失効と歳出の自動削減が重なる「財政の崖」回避に向けて協議が続けられるなか、オバマ大統領は4日、来年の税制改革の一環として税率の引き下げを行う可能性をちらつかせる一方、富裕層向けの税率は引き上げる必要があるとの立場を崩さなかった。
こうしたなか、共和党議員の一部がこの日、ベイナー下院議長が前日提案した税制改革による税収拡大に反対する立場を表明するなど、共和党内の亀裂が表面化した。
この日はオバマ大統領、および議会両院の指導部がホワイトハウスで州知事らとの会合に臨んだ。デラウェア州のマーケル知事(民主党)とオクラホマ州のファリン知事(共和党)は会合後記者団に対し、党派の違いを乗り越え、意見の相違を乗り越えることはできるとの認識を示した。
オバマ大統領は会合後、ブルームバーグ・テレビのインタビューに対し、低所得層向け医療保険(メディケイド)などの改革を排除しない立場をあらためて示した上で、国民の98%に適用されている税率は維持する必要があるものの、国民の2%に当たる富裕層に対する税率は引き上げる必要があるとの立場を強調した。
ただ、「2013年秋ごろか終盤に、税制改革の一環として、民主、共和両党が前向きな姿勢を示している税制の抜け穴封じや控除制限を検討する。その時点で、税制基盤を拡大することで税率を引き下げることができる可能性もある」と述べた。
こうしたなか、共和党のジム・デミント上院議員(サウスカロライナ州)はこの日、ベイナー下院議長が「財政の崖」回避案として前日提案した税制改革による税収拡大に反対する立場を表明。財政問題をめぐる共和党内の亀裂が浮き彫りになった。
草の根保守運動「茶会党」(ティーパーティー)から強い支持を受けるデミント議員は、ベイナー下院議長が新たに提示した8000億ドル規模の税収拡大案について、雇用を損ない、政治家に対し歳出の削減ではなく拡大を許すことになるとの見方を示した。
デミント議員は声明で「(増税によって)経済から資金を取り去れば雇用が破壊されることは誰でも知っている。政治家により多くの資金を与えれば使ってしまうことも皆分かっている」と言明。
「共和党として増税に反対し、政府の規模縮小と国民の取り分増加につながる本当の歳出削減を強く要求しなければならないのはこのためだ」と主張した。
ベイナー下院議長の提案に先立ち共和党内部では、財政の崖回避に向け月内に合意をまとめるため、オバマ大統領が要求している富裕層向け増税を受け入れる姿勢を示す議員も出ていた。
デミント議員の発言は、ベイナー下院議長が党内から増税への反対を堅持するよう求められる一方で、民主党との間で共通点を見い出すためには増税に応じる必要があるとの意見にも直面していることを示している。
米非営利調査機関、ピュー・リサーチ・センターによると、国民の約半数が「財政の崖」回避に向けた合意は得られないと予想している。合意が得られなかった場合の責任の所在については、53%が共和党、27%がオバマ政権にあるとの見方を示した。

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