アングル:米利上げで再びコモディティ価格は急落か

アングル:米利上げで再びコモディティ価格は急落か
 11月18日、米連邦準備理事会が大方の予想通り12月に利上げし、ドル高が一段と進むようなら、コモディティ市場が再び大幅な価格下落に見舞われるのは避けられない。写真は9月、米ワシントンのFRB本部(2015年 ロイター/Kevin Lamarque)
[ロンドン 18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が大方の予想通り12月に利上げし、ドル高が一段と進むようなら、コモディティ市場が再び大幅な価格下落に見舞われるのは避けられない。
その第1の理由は、生産者の事情だ。大半のコモディティはチリやロシアといった非ドル圏で生産されており、ドル高は輸出収入の増加をもたらすとともに、現地通貨建てで支払う労働コストは低下するため、これらの生産者はコモディティ安局面をしのいでいくことが可能となり、供給が大きく落ち込むことはない。
第2の理由は新興国の成長鈍化。ファンドマネジャーによるとドル高で大半がドル建ての債務の借り換え負担が向こう2、3年で増大してしまう。これが近年はコモディティ需要をけん引してきた新興国の経済を冷え込ませる。
さらにコモディティの最大の消費国である中国が、コモディティを投入する重工業から国内消費主導の経済へ構造転換を進めていることが加わり、コモディティ価格が下がる素地は整い過ぎるほど整っている。
ロンドン&キャピタルの投資ディレクター、アショク・シャー氏は「世界経済、特に新興国市場における成長鈍化は、これまでに生み出され、なお生み出され続けている(コモディティの)過剰な生産設備が長期にわたって解消されないことを意味している」と述べた。
過剰設備は過去のコモディティ価格高騰局面で生まれた。銅は2011年2月にはトン当たり1万ドルを突破したが、今は4700ドル近くに落ち込んだ。北海ブレント先物は08年7月に1バレル=150ドルに迫ったものの、現在は40ドル付近で推移している。
生産設備の形成には3年から5年かかる。中にはもう稼働している設備もあれば、今後1年前後で稼働を始める設備もある。
一部の鉱業会社はこれまでのコモディティ価格下落を受けて生産を減らしたが、多くの業者はコスト低下の恩恵を受けて利益率を維持できるため、過剰供給状態にある市場でなおも生産ペースを落とさずにいるのだ。
JPモルガンが中国を除く世界の銅生産業者(全生産量のおよそ4割相当)を対象に実施した調査では、最も生産コストの高い業者は今年に入ってコストが14%下がった。来年になればコストはさらに5%下がると見込まれており、減産が期待できなくなるので銅相場の弱気見通しには拍車がかかっている。
コスト押し下げの主因は、現地通貨に対してドルが値上がりしていることだ。
(Pratima Desai記者)

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