中国株が再び急落、資源安巻き込み高まる不安心理

中国株が再び急落、資源安巻き込み高まる不安心理
 7月27日、中国株が再び大きく下落し、警戒感が強まっている。写真は上海の証券会社で株価ボードを見る投資家。14日撮影(2015年 ロイター/Aly Song)
[東京 27日 ロイター] - 中国株が再び大きく下落し、警戒感が強まっている。売買が再開された銘柄にあらためて売りが出ているためだが、同国の弱い経済指標が相次ぎ、資源安を巻き込んだ世界景気減速への懸念が市場心理を冷やしている。
資源安には原材料費軽減のプラス効果もあるが、不安心理が高まる中で、リスクオフの動きが先行しやすい状況だ。
<溜まっていた売り>
27日の市場で上海総合指数<.SSEC>は8.48%と、2007年2月以来の大きな下落幅となった。
上海株は6月12日の高値から7月9日の日中安値まで、約35%下落した後、中国政府などから政策や対策が矢継ぎ早に打たれたことで、前週末24日には一時、安値から24%反発。落ち着いてきたとの見方も出始めたところでの急落となった。
特段のきっかけは、観測されていない。しかし、売買が停止されていた銘柄が徐々に売買再開されるなかで、溜まっていた売りが一気に出たとの見方が有力だ。
この間、中国の経済指標にはさえないデータが続いていた。4─6月期国内総生産(GDP)こそ7.0%増と政府目標にピタリと着地したが、7月の中国製造業PMI(財新/マークイット)は15カ月ぶり低水準。6月の工業部門企業利益は、前年同月比0.3%減とマイナスに転じた。
「景気減速懸念が強まっているにもかかわらず、人為的に株価が支えられていたことで、ゆがみが一気に噴き出した可能性がある」と、楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏は指摘する。
<さらなる株価対策に期待>
株価が再び急落局面に入れば、中国政府の株価対策が再び出てくるとの見方もあり、売買再開銘柄への売りが一巡すれば、株価は下げ止まりそうだ。10月に五中全会(党中央委員会第5回全体会議)を控えているほか、来年からは新5カ年計画も始まる。景気を腰折れさすような株安を容認するとは考えにくい。
ただ、中国を中心に世界経済の減速懸念はじわりと強まっている。需要減少を警戒し、資源価格は大きく下落。27日の市場で金価格は小反発したが、原油先物は続落した。「早期の米利上げ観測に伴うドル高と中国需要の減速懸念が、資源価格の重しになっている」(ばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏)という。
米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、最近2週間の貴金属ファンドからの資金流出は100億ドルとなり、4カ月ぶりの高水準、新興国ファンドの流出額も合計100億ドルとなった。金、コモディティ、新興国資産の「投げ売り」が起きていると24日付のリポートで指摘している。
<資源安にはプラス面も>
資源安は、マイナス面ばかりではない。資源国経済の重しになる半面、資源を輸入している先進国には原材料コストの軽減を通じてプラスの効果をもたらす。日本にとっては、原油安とその他の資源安で10兆円以上のプラス効果があるとT&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏は試算する。日本のGDP2%分に相当する大きさだ。
しかし、市場にリスクオフムードが広がる中では、こうしたプラス面を織り込むのは難しい。コモディティや新興国資産から流れ出たマネーが日本株にシフトするとの期待もあるが、27日の日経平均<.N225>は一時、250円を超える下落となった。
市場の乱高下を演出しているのは、ヘッジファンドなど海外の短期筋だ。7月第2週に日本株を現物と先物合わせて1兆5894億円売り越したが、翌第3週には1兆1040億円買い越した。足元では、その反動による売りが出ているとみられている。
日本企業の業績は堅調であり、資源安が中期的には追い風となったとしても、リスクオフ局面では外需減退のマイナス面が強調されやすい。日本株市場も「夏枯れ」で売買ボリュームが少なくなってきた。薄商いの中での、海外短期筋の売買による乱高下には警戒が必要だ。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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