コラム:孫氏が本領発揮、ヤフー・LINE統合に大きなうまみ

コラム:孫氏が本領発揮、ヤフー・LINE統合に大きなうまみ
11月13日、検索サービスのヤフーを展開するZホールディングスと無料通信アプリを手掛けるLINEが、経営統合に向けて検討に入った。写真は2018年5月、都内でカンファレンスに出席する孫正義氏(2019年 ロイター/Toru Hanai)
Liam Proud Karen Kwok
[ロンドン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 検索サービスのヤフーを展開するZホールディングス<4689.T>と無料通信アプリを手掛けるLINEが、経営統合に向けて検討に入った。高齢者の5人に4人が買い物の支払いを現金で行っている日本で、出遅れていたデジタル決済サービスが拡大のチャンスを迎えた。Zホールディングスの親会社・ソフトバンクグループ<9984.T>を率いる孫正義氏が、本領を発揮した形だ。
ソフトバンクグループ傘下の通信会社・ソフトバンク<9434.T>は、Zホールディングス(旧ヤフー、時価総額170億ドル)株式の45%を保有している。LINE(時価総額100億ドル)は韓国のネイバー<035420.KS>が73%の株式を保有し、LINEの日本人ユーザー数は8200万人に上る。
ロイターの13日の報道によると、統合計画には孫氏とネイバーのハン・ソンスク最高経営責任者(CEO)が関与した可能性がある。両陣営は折半出資してヤフーとLINEの支配権を持つ新会社を設立する。12日の株価に基づく新会社の企業価値は、約150億ドルだ。
今回の計画は、日本のモバイル決済市場で大規模な提携関係を生み出す点に大きなうまみがある。安倍晋三首相は、デジタル決済の比率を2025年までに現在の2倍の40%に高める目標を掲げている。
LINEのキャッシュレス決済サービス「LINEペイ」の登録者数は約3700万人。今年1─9月の同サービスを使った決済額は80億ドル弱だが、それでも巨大な顧客基盤だ。
ヤフーのスマホ決済サービス「ペイペイ」は、ソフトバンクとインドの決済フィンテック企業Paytm(ペイティーエム)との共同事業で、利用者数は1200万人余り。
LINEペイとペイペイを合わせると、電子商取引最大手の楽天を抜く。統合報道を受けて米市場に上場しているLINEの米預託証券(ADR)は、25%以上も急騰した。
孫氏にとっても実入りは大きい。折半出資の新会社設立によりソフトバンクは事実上、保有するZホールディングス株の半分をLINE株式の36%と交換することになる。アナリストによると、LINEの売上高は今後5年間に、ほぼ3倍に膨らむ見通しだ。
孫氏は、LINEの若年ユーザー層へのアクセスも拡大できる。こうしたユーザーによるLINEでの「スタンプ」送信は昨年、1日平均で約4億回に達した。
何よりもすばらしいのは、LINEのフリーキャッシュフローが、21年にはプラスになり始めるとアナリストが予想していることだ。
共有オフィス「ウィーワーク」への巨額出資で大きな損失を被った孫氏だが、風向きが「追い風」に変わるかもしれない。
●背景となるニュース
*ロイターは13日、関係者2人の話として、検索サービスのヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)と無料通信アプリを手掛けるLINEが、経営統合に向けて調整に入ったと報じた。ZホールディングスLINEはそれぞれ14日、「協議を行っていることは事実」とするコメントを発表した。
*計画によると、Zホールディングスの親会社ソフトバンクとLINEの親会社ネイバーが、折半出資の新会社を設立する。新会社はZホールディングスを傘下に収め、ZホールディングスがLINEとヤフーを運営する。通信大手のソフトバンクはソフトバンクグループの中核会社。
*ヤフーとLINEの経営統合報道を受けて、13日のニューヨーク市場でLINEの米預託証券が25%余り値上がりした。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab