アングル:内閣支持率急落、市場織り込めず様子見に

アングル:内閣支持率急落、市場織り込めず様子見に
 3月19日、学校法人「森友学園」をめぐる財務省の決裁文書の書き換え問題が、安倍晋三政権の支持率を直撃している。写真は安倍政権の退陣を求めるデモ活動をする人たち。首相官邸近くで16日撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)
[東京 19日 ロイター] - 学校法人「森友学園」をめぐる財務省の決裁文書の書き換え問題が、安倍晋三政権の支持率を直撃している。この週末に実施された国内報道4社の世論調査では、内閣支持率がいずれも30%台に急落。不支持率が急上昇して逆転現象が起きている。
市場の一部では政権の動揺を材料視する向きも出始めたが、どのように織り込むべきか方向感に一致した見方はなく、19日の参院予算委で行われる集中審議を見極めたいとの声も出ている。
4社のうちで最も支持率が低かったのがNNN(調査期間・16日─18日)で30.3%。前回比13.7ポイントも下がり、不支持率は53.0%と同15.7ポイント上昇した。
このほか、共同通信が支持率38.7%(前回比9.4ポイント低下)、不支持率48.2%(同9.2ポイント上昇)、朝日新聞が支持率31%(同13ポイント低下)、不支持率48%(同11ポイント上昇)、毎日新聞が支持率33%(同12ポイント低下)、不支持率47%(同15ポイント上昇)とほぼ、同じ傾向となっている。
調査時期が早かった読売新聞(9日─11日)では、支持率が48%(同6ポイント低下)、不支持率が42%(同6ポイント上昇)、産経新聞(10─11日)が支持率45.%(同6.0ポイント低下)、不支持率が43.8%(同4.8ポイント上昇)、時事通信が支持率39.3%(同9.4ポイント低下)、不支持率が40.4%(同8.5ポイント上昇)だった。
調査時期が遅くなるにつれ、支持率の低下幅が大きくなり、支持率の水準も30%台に低迷する一方、不支持率が支持率を上回る状況になっていることがわかる。
菅義偉官房長官は、時事通信の調査結果が出た16日夕の会見で「(財務省の)書き換え問題には、政府としてしっかりと対応したい」と述べていた。
みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏は19日のリポートで、「昨年7月の都議会選前より大きなピンチに安倍首相は直面している」と指摘した。
また、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア債券ストラテジスト、稲留克俊氏は19日のリポートで「書き換え問題への世論の評価は厳しいようだ」とコメント。
ただ、市場への影響については「今後の政治動向次第で、強い買い材料にも強い売り材料にもなり得る」と述べている。
具体的には、支持率をテコ入れするための日銀への追加緩和圧力や単純なリスク回避は円債買いになると予想。
一方、安倍首相退陣による日銀緩和の早期出口観測を理由にすれば売り材料になると想定している。
また、上野氏も「他の選択肢が当面、見当たらないという消極的な理由から、安倍首相が続投する可能性が現時点では高い」と予想している。
こうした方向感に欠けるムードを反映し、日経平均<.N225>は19日午前の取引で110円前後安い2万1500円台で推移している。

田巻一彦

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