焦点:日産が北米市場でホンダ猛追、デザインに高評価

焦点:日産が北米市場でホンダ猛追、デザインに高評価
 8月8日、日産は最近発売したモデルがスタイル面で高い評価を得ているほか、積極的な値下げ戦略が奏功し、北米市場でホンダを急速に追い上げている。写真は日産のロゴ。7月撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)
[デトロイト 8日 ロイター] - 北米における日本の自動車メーカーの競争はこの25年以上の間、トヨタとホンダの2強による競争だったといっても過言ではない。日産は大きく遅れをとってきたが、日産の劣勢時代は終わったのかもしれない。
日産<7201.T>は、ここ最近発売したモデルがスタイル面で高い評価を得ているほか、その車種の幅広さや、積極的な値下げ戦略が奏功した結果、ホンダを急速に追い上げている。向こう数年以内には、1987年以来初めて、米市場での販売台数でホンダを抜き去る可能性がある。
日産はその野望を隠そうとしていない。
日産北米部門のホセ・ムニョス会長は「ホンダを抜くのは確実」としたうえで、2016年までに米市場でのシェアを10%に伸ばすことを目指している、と述べた。
1─7月の日産のシェアは8.6%で2009年の7.4%から上昇。ホンダは9.1%で、ピークだった09年の11%から低下、06年以来の低水準となった。トヨタ<7203.T>のシェアは現在約15%だ。
<日産、デザイン重視で反撃>
ホンダ<7267.T>はかつてトレンドセッターだった。日本の企業として初めて米国で自動車を生産、その後、全米において販売と生産を急速に拡大するさまは「常軌を逸したスピード」とも評されるほどだった。「We Make it Simple」「Honda: The Power of Dreams」などのスローガンで販促を展開、その品質の高さは瞬く間に消費者の心をとらえた。
自動車コンサルタントのメアリアン・ケラー氏は(ホンダは)「かつて高品質と洗練の代名詞だった。しかし今では、ホンダと聞いて何を連想するかとの質問に、消費者が答えられるのか分からない」と話す。
例えば、ホンダの人気車種には「アコード」や「シビック」などがあるが、どちらのモデルも「スタイルセッター」とは言えないだろう。
調査会社JDパワーのグローバル・オートモーティブ部門バイスプレジデントのデーブ・サージェント氏は「品質が高く、信頼もできるが、心躍らせるようなものではない」と述べた。それでも「高品質で信頼できるというホンダの印象は(日産より)著しく良い」とも述べた。
日産はこれまで、面白みがないと見られることも多かった。
しかしゴーン最高経営責任者(CEO)や、グローバルデザインを率いる中村史郎氏の下、日産車は最近、デザインに磨きがかかっていると評判だ。
米ゼネラル・モーターズ(GM)の元副会長で、グローバルプロダクトディベロップメントの責任者だったボブ・ルッツ氏は「重要なのは結局、製品とスタイリングだ」と述べたうえで、日産には「アルティマ」など「非常に魅力的な車がいくつかある」との見方を示した。
ホンダは最も人気にある3モデル「アコード」「シビック」「CR─V」への依存度が高く、これらは米販売台数の69%程度を占める。
半面、日産では、人気上位3モデル「アルティマ」「セントラ」「ローグ」が、米市場での販売台数に占める割合は52%にどとまる。
これは、日産が進める多様化戦略と一致する。日産が米国で販売するモデルの数が27なのに対して、ホンダは16モデルとなっている。
<積極的な値引きやインセンティブ戦略>
ホンダと日産による2位争いの結末は、両社の業績にとって重要な意味を持っている。カナダを含む北米市場は、4─6月期のホンダのグローバル売上高の約41%に当たり、日産では49%近くに相当する。
ホンダは、日産が店頭表示価格の引き下げや積極的なインセンティブ(販売奨励金)を通じて米市場シェアを伸ばしている、としている。
アメリカン・ホンダ・モーターのホンダ部門シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャー、ジェフ・コンラッド氏は「当社では、シェア拡大のために、短期的な販売戦略をとることはしない」と強調した。
トゥルーカー・ドットコムによると、日産車1台あたりのインセンティブは今年上期、平均2497ドルと若干低下した。ホンダは1969ドルで26%急増したが、日産の平均値はなお大幅に下回っている。
ホンダは販売価格や利益率でも、日産より堅実だ。トゥルーカー・ドットコムによると、ホンダの上期の販売価格は1台あたり平均2万7093ドル。日産の平均価格は7%下落し2万6150ドルとなった。
要するに、日産が米市場でホンダを抜くというゴールを達成するためには、相応のコストがかかる可能性があることを意味する。ゴーンCEOら経営陣は、どの程度の利益を犠牲にする覚悟があるのだろうか。

Bernie Woodall、Ben Klayman、Paul Lienert 翻訳:吉川彩 編集:内田慎一)

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