中国鉄鉱石業者が資金調達難、二重担保問題受け銀行が融資縮小

中国鉄鉱石業者が資金調達難、二重担保問題受け銀行が融資縮小
 6月20日、中国では二重担保の問題で銀行が融資を縮小しているため、鉄鉱石業者の資金調達が困難になっている。青島港で7日撮影(2014年 ロイターFayen Wong)
[上海 20日 ロイター] - 中国の鉄鉱石取引業者が資金調達難に陥っている。山東省の青島港で保管されていた銅やアルミが複数の融資の担保に設定される不正が発覚し、当局が調査に乗り出したことが影響し、銀行が融資に慎重になっているためだ。
鉄鉱石取引に主な貸し手となってきた中国の銀行はここ2カ月、資源の主要取引拠点がある山東省だけでなく、金融センターの上海、代表的な鉄鋼生産拠点である河北省など全国で鉄鉱石融資の審査を厳格化している。取引業者が売り先を確保することを信用状(L/C)発行の条件としている銀行もあるという。
中国銀行<601988.SS>の山東省の支店は、銀行が貿易取引の支払いを確約するL/Cを発行するためには、省の本部の承認を得なければならない。また省の本部は、小規模企業への融資をほぼ停止している、という。 山東省のある鉄鉱石取引業者は「中国銀行にL/Cを発行してもらうのは、非常に手続きが煩雑で時間がかかる。基本的に中国銀行には頼まないことにしている」と語った。「融資が得られないため、今年、来年と多くの業者が廃業に追い込まれる」との見方を示した。 中国銀行の広報担当者は、ロイターの電子メールによる取材に回答しなかった。同行の山東省支店のコメントは得られていない。
中国建設銀行<601939.SS>の関係者は、匿名を条件に「現在、(コモディティ関連の)新規融資をストップし、融資の回収を進めている。同時に行内監督も強化した」と明かした。
中国建設銀行の広報のコメントは得られなかった。
他の国有銀行も融資の審査を厳格化したり、L/C発行を停止しているかどうかは、現在のところ不明。中国工商銀行<601398.SS>の広報室に取材を申し入れたが、コメントは得られなかった。
<鉄鉱石価格を圧迫>
必要な融資が受けられなければ、規模の小さい取引業者は、保有している鉄鉱石の売却を迫られ、すでに低迷している価格をさらに押し下げることが予想される。中国の鉄鉱石価格<.IO62-CNI=SI>は今年に入り33%近く下落し、6月16日にはトン当たり90ドルを割り込み1年9カ月ぶり安値を付けた。銀行の間では、規模の小さい業者への融資が焦げ付くことが懸念されている。
業界コンサルタント会社Uメタルのデータによると、中国の主要港に保管されている鉄鉱石は5月末時点で1億1310万トンと過去最高水準。その34%が取引業者の保有という。 担保に利用される鉄鉱石がどの程度か把握する公式なデータはないが、業界関係者は、資金返済の遅延や不履行が起これば、銀行はますます融資を縮小し、すでに資金繰りに窮している業者にさらなる打撃を与えると懸念している。
UOBケイヒアン証券(香港)の資源関連シニアアナリスト、ヘレン・ラウ氏は「貸し渋りは、鉄鉱石市場の供給過剰を深刻化させ、価格をさらに押し下げる。次の節目は80ドルだ」と述べた。
マッコーリーのアナリスト、グレアム・トレイン氏はリポートで「鉄鉱石をめぐる次の変化は過剰在庫の一掃と考える。購入量が実需を下回る水準まで減る必要がある。また価格は、短期的に下落する可能性がある」と指摘した。 一方、シティはリポートで、鉄鉱石価格がトン当たり90ドルならば、中国などでの大幅な減産につながり、「今年、90ドル割れの状態が続く事態は避けられる」との見方を示している。

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