コラム:米製造業、既にリセッション入りが濃厚

コラム:米製造業、既にリセッション入りが濃厚
 1月19日、 米国の製造業は昨年第4・四半期にリセッション(景気後退)に突入したとみられる。アラバマ州ウッドストックの自動車用電池工場で2022年3月撮影(2023年 ロイター/Elijah Nouvelage)
John Kemp
[ロンドン 19日 ロイター] - 米国の製造業は昨年第4・四半期にリセッション(景気後退)に突入したとみられる。これは世界的な鉱工業生産の落ち込みの一環であり、コモディティー市場で部分的なスラック(需給のゆるみ)を生み出している。
このことはハイフリークエンシー(集計頻度の高い)指標からうかがえる。米供給管理協会(ISM)の製造業総合指数は昨年11、12月と連続で拡大・縮小の分岐点である50を下回った。連邦準備理事会(FRB)の製造業生産指数も両月とも低下し、2022年末の生産が21年末比で0.4%減少したことを示した。
米製造業は第4・四半期に販売価格の引き上げを継続したが、卸売価格の上昇は減速し、投入コストの上昇圧力も和らいで財の需要は減少した。
昨年10─12月の生産者物価指数(食品とエネルギーを除く)は前年同期比4.2%の上昇に鈍化。昨年2─4月期には同11.5%上昇していた。
米製造業は雇用を増やし続けているが、雇用は遅行指標である上、需要減少に伴って伸び率は減速している。
10─12月期の製造業の賃金伸び率は前年同期比1.6%で、2─4月期の同5.5%を下回った。
11月の主要9港のコンテナ貨物取扱量は249万TEU(20フィートコンテナ換算)と、前年同月の281万TEUから減少し、11月として2015年以来で最低となった。
11月に米国の主要鉄道が輸送したコンテナ貨物は107万TEUと、前年同月の113万TEUから減少し、11月として2012年以来の最低。直近の週間データでは、今年最初の2週間分が前年同期比9%減少している。
チャートブック:米国の製造業と貨物
需要の緩みは、販売促進と過剰在庫処分のための値引き増加という形で顕在化し始めている。
10─12月の消費者物価(食品とエネルギーを除く)は前年同期比4.8%低下した。
電気自動車(EV)大手テスラは今月、米国で販売トップ級のモデルについて6─20%の値引きを発表した。
需要減少に対応し、宅配大手フェデックスは3月から米国の多くの地域で日曜の小包配達を縮小する計画だ。
これらを総合すると、高いインフレと実質所得の低下、金利上昇に反応して製造と貨物の数量が減っている構図が見えてくる。
米国で製造業が減速し、欧州と中国では減速ぶりがさらに顕著なことを考えると、昨年末にかけて幅広いコモディティー価格が下落したのも説明がつく。
今後数カ月間、実質所得の減少が続いて金利がさらに上昇するのに伴い、落ち込みは深まる公算が大きい。
ISM製造業調査では、新規受注指数が過去7カ月のうち6カ月で50を割り込んだ。12月は45.2と、2020年のパンデミック第1波以来の最低で、それ以前でここまで低かったのは2012年にさかのぼる。
ISMによると、12月には新規受注が前月比で減ったと答えた企業(32%)が、増えたと答えた企業(16%)の2倍以上を占めており、製造業生産が今後さらに落ち込む可能性がうかがえる。
(筆者はロイターのマーケットアナリストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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