ブログ:存在感増す外国人観光客と労働者

ブログ:存在感増す外国人観光客と労働者
写真は2008年、東京ディズニーリゾートで記念写真を撮るタイからの観光客(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)
竹本 能文
仕事柄地下鉄に乗ることが多いが、特に多いのは銀座線だ。日比谷線や丸ノ内線などと乗り換えることが多いが、最近目に付くのは路線図を開いて目をきょろきょろさせている外国人とおぼしき観光客の姿だ。
観光庁の調査などによると、ビザ緩和措置の効果でタイなど東南アジアの観光客が急増している。富裕層のタイ人観光客が急増しているのはデパートの免税売り上げなどからも裏付けられるようだ。
二重橋駅そばの地下通路で、タイ人の女子学生2人から浅草とディズニーランドの行き方を聞かれた。まず皇居をみて、次にどこにいこうかということなのだろう。
アベノミクスは5月22日以降、事実上失速しつつあるとの声が政策当局者の間で増えているが、円安とビザ緩和による東南アジア観光客の急増は素直に喜ぶべき成果と思いたい。観光資源が多いのに、真面目に宣伝してないと疑問を抱く外国人は多いからだ。
観光資源というと、世界遺産など国際的なお墨付きを得たものを連想しがちだが、韓国のテレビドラマに取り上げられた秋田県のある場所に同国観光客が殺到するなど、自然発生的な観光資源もある。阿蘇と桜島にいたく感動したオーストラリア人もいたが、天然自然の姿をそのまま愛でたい人も多いようだ。
政府は年末以降、ビザ緩和措置の対象国をミャンマーなどにも広げる見通しだ。中国やロシアについては、現時点ではっきりした動きはないが、検討の俎上(そじょう)に載せる可能性も皆無ではないようだ。
観光客の増加は当然、不法移民の増加と表裏一体だ。単純労働者の入国は原則、難しいはずの日本だが、実際は語学留学などの形で入国しているとみられる。建設・港湾現場などにも外国人労働者は散見され、実際与党側にも安価な外国人労働者の雇い方について問い合わせも来ているようだ。
移民の問題はどこの先進国も頭を抱えており、日本も国民的コンセンサスができているとは言い難い。スイスのように厳密な期間労働・出稼ぎのみ許容するのか、フランスのように語学・文化的順応度で測るのか、米国のように常に摩擦を抱えながら、見て見ぬふりで受け入れ、国内経済の活力として取り込むのか、今後の議論が必要だろう。
ただ昨今の建設関連における人手不足は、潜在的に不法移民を受け入れる素地が拡大しているともいえ、現実の動きは意外と早いかもしれない。
(東京 12日 ロイター)

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