焦点:中国、環境犠牲の成長モデルを転換へ

焦点:中国、環境犠牲の成長モデルを転換へ
11月18日、中国は、環境を犠牲に経済成長を追求するモデルを転換する。写真は7日、上海で撮影(2013年 ロイター/Aly Song)
[北京 18日 ロイター] -中国は、環境を犠牲に経済成長を追求するモデルを転換する。30年に及ぶ野放図な拡大政策で深刻な環境汚染が進む中、政府当局者に対する環境政策面の評価は信賞必罰で臨む方針だ。
中国共産党は第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)を受けて先週公表した経済・社会改革計画の中で、党幹部を評価する際に環境保護への取り組み状況を一段と重視するほか、環境問題について地元当局に直接の責任を負わせることを明記。環境的に影響を受けやすい地域の経済発展を抑制するため「生態保護のレッドライン(越えてはならない一線)」を設定するとした。
中国では工業化が進み、長期間にわたる2桁成長を実現する一方、大気や土壌、水の汚染で民衆の怒りが高まっている。中国政府は向こう10年で「美しい中国」を実現すると約束しているが、公害をまき散らす工業分野の国有企業や、経済成長を最重視する地方政府に手を焼いている。
三中全会決定文書は、どれだけの経済成長を実現したかに傾いていた当局者の評価方法を改め、資源利用状況や環境破壊への取り組みといった項目を重視することを示した。
中国は、地方の当局者を環境問題への対応で評価する手法を既に取り入れているが、依然として経済が優先事項とみなされていた。地方当局は汚染の原因に対処するよりも、仰々しい公園の建設や森林再生プロジェクトへの取り組みで自らの環境意識をアピールしている。
南京大学で産業の環境に対する影響を研究するジョウ・レイ氏は「彼ら(地方の当局者)はこれまで、たとえ一時的に大きな環境負荷になるとしても、経済成長を生み出す別の方法として環境保護を利用しており、今後も短期的な経済メリットを考慮するのではないか」と述べた。
<環境保護省の権限強化か>
三中全会文書はまた、「統一的な」中央政府機関を設置し、環境ルールの適用体制を改善すると表明。専門家らは、来年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で見込まれる政府部門改革の一環として、中国が環境保護省の権限を強化するのではないかとみている。
同省の潘岳次官を含めた当局者は、環境に関する重要な権限がさまざまな部門に分散しているなどとして、現在の体制は不十分だとしている。
来年の政府部門再編では、現在は国家林業局、水利省、国家発展改革委員会が持つ権限を環境保護省が引き継ぐ可能性がある。
近く公表されるとみられる改正環境保護法は、違反を繰り返す者への罰金・罰則を科す幅広い新たな権限を環境規制当局に付与し、環境汚染の監視機能を高める見通しだ。
しかし、南京大学のジョウ氏は、新たなルールは不十分なものになるとの見通しを示す。
同氏は「私の考えでは、それは典型的な中国的リップサービスであり、真剣に扱われるべきではない」と指摘。「現在の環境劣化を本当に解決するのは、全ての疑わしいプロジェクトを体系的に再評価することであり、全ての違反者を処罰することだ」と語った。
(David Stanway 翻訳:川上健一 編集:吉瀬邦彦)

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