上昇に弾みつく日本株、しびれ切らした国内勢も参戦

上昇に弾みつく日本株、しびれ切らした国内勢も参戦
5月20日、日本株の上昇に弾みがついている。これまで売り越し基調だった国内勢も、しびれを切らし買いに参戦し始めてきたという。写真は都内で3月撮影(2013年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 20日 ロイター] 日本株の上昇に弾みがついている。海外勢は短期筋から長期投資家に買いの主体が変化しつつあるほか、これまで売り越し基調だった国内勢も、しびれを切らし買いに参戦し始めてきたという。
短期過熱感は強まり割安感も後退しているが、円安進行が途切れないことで、企業業績の上方修正期待が強気を後押ししており、金利上昇の影響を吸収する地合いの強さを見せている。
<参戦する国内勢>
「富裕層が株式投資を本格化させてきた。注文金額が大きいので取り扱いに気を遣う」(銀行系証券プライベートバンキング担当者)、「手元資金をため込んできた企業が日本株投資に積極的になっている」(準大手証券法人営業担当者)──。国内勢の日本株投資が熱を帯びてきたとの株式営業担当者の声が増えてきている。
国内勢はこれまで総じて売り越しだった。東証の投資主体別売買状況によると、外国人投資家は昨年11月第2週から5月第2週まで約9.2兆円を買い越したが、個人投資家は約2.9兆円、年金基金などの動向を反映するとみられている信託銀行は約3.6兆円売り越した。これまで損を抱え「塩漬け」にしていた保有株が株価上昇でようやく売れるようになった、いわゆる「ヤレヤレ売り」が背景だ。
ただ、ここにきて国内勢の投資スタンスには変化が見え始めている。投信は3月までは売り越しだったものの、4月は230億円、5月は2週間で524億円買い越した。個人投資家の売りは続いているものの、野村アセットマネジメントが運用する株式投資信託が新たな買い付け申し込みを一時停止するなど、投信を通じたニューマネーも入っている。信託銀行も5月第1週は31億円の買い越し、第2週は売り越しに戻ったが、167億円と小幅にとどまるなど、年金の売りも一巡し始めた。
20日の日経平均<.N225>は200円を超える上昇となり、2007年12月28日以来、5年5カ月ぶりに1万5300円台を回復した。日経平均のパフォーマンスは、今年に入っても45%上昇(昨年11月14日からは74%上昇)と先進国の中で断トツ。「3カ月までならなんとか顧客に買わない言い訳ができるが、もう言い訳は通じない。過熱感が強く、短期調整があると思っていても、買わざるを得なくなっている」(生保系投信)という。
<買い主体変わる海外勢>
海外勢は先行して日本株を買っていたヘッジファンドなどが利益確定売りを出しているが、年金を含む長期投資家が参戦し始めるなど買いの主体が変わり始めているという。「売り越しに転じているヘッジファンドもいるが、一部の大型ファンドはようやく日本株を調査し始めた段階だ。日本株に過熱感は出ているが、成長戦略などを通じ、日本の経済や企業がまだまだ成長するとの期待があるようだ」と立花証券の顧問、平野憲一氏は話す。
シュローダー・グループが欧州、米国、アジアなど世界20カ国で、今後1年間に新たに1万ユーロ以上の投資を予定している個人投資家約1万5000人を対象にした5月の調査では、87%の投資家が昨年と同額以上に投資を増やすことを予定しており、配分先は株式が85%と高く、中でも日本株は54%にのぼった。
債券から株への、いわゆる「グレート・ローテーション」を示すようなデータがまだ明確にみられたわけではないが、金融緩和と低金利によって生み出された潤沢なリスクマネーが日本や米国などの株式市場に流れ込んでいるのは確かだ。
<円安期待で先高観>
株価の急上昇で、日経平均採用銘柄平均の今期予想PER(株価収益率)は約17倍、PBR(株価純資産倍率)は1.45倍と割安感は後退している。だが、市場では「想定為替レートは85─90円で設定している企業が多く上方修正含みだ。円安が進めばさらなる上振れも期待できる」(国内証券)との期待が強い。
前週末に103円を回復したドル/円は、週明け早朝の時間帯に甘利明経済再生担当相が円安のもたらす弊害に警戒感を示したことで、102円ちょうどまで急落するなど、不安定な展開となっているが、市場のムードはドル高であり、先行きの円安予想は維持されている。
FPG証券・代表取締役の深谷幸司氏は「市場の流れはドル全面高であり、日本サイドで円安のスピードを警戒する発言が出ても、ドル高の流れを本質的に変えるような影響をもたらさないだろう。日本サイドは円安の弊害やネガティブな側面を意識し始めたようだが、市場は日本の事情には関心を払っていない」と指摘。今後は米景気指標をみて、ドル/円相場を予想していくしかないと言う。
米経済指標は、欧州発のグローバル経済鈍化が続いていることから製造業関連は弱いが、内需は金利低下とガソリン価格の低下で依然堅調だ。「米経済は強さと弱さが同居している。それゆえ金融緩和と緩やかな景気回復が共存できる状態が続き、過剰なマネーが株式などの市場に流れ込んでいる」とT&Dアセットマネジメント・チーフエコノミストの神谷尚志氏は話している。
(ロイターニュース 伊賀大記;編集 山川薫、宮崎亜巳)

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