米コストコは仮想店舗で中国進出、ウォルマートの失敗から教訓

米コストコは仮想店舗で中国進出、ウォルマートの失敗から教訓
 10月17日、米会員制倉庫型ストアのコストコ・ホールセールは、中国の電子商取引大手、アリババ・グループ・ホールディング傘下の仮想商店街「天猫(Tモール)」を通じた中国進出を発表した。ロサンゼルスで昨年3月撮影(2014年 ロイター/Mario Anzuoni)
[シカゴ 17日 ロイター] - 米会員制倉庫型ストアのコストコ・ホールセールは、中国の電子商取引大手、アリババ・グループ・ホールディング傘下の仮想商店街「天猫(Tモール)」を通じた中国進出を発表した。地元業者のノウハウや低価格構造を活用することで、小売り世界最大手のウォルマート・ストアーズも直面した中国市場での失敗を避けたい考えだ。
これまで中国進出を果たしてきた小売り企業は、地元顧客が好む商品構成や店舗デザインの提供に腐心してきた。ウォルマート以外にも、ベスト・バイやイーベイなどが中国の消費者の期待に沿うような事業展開に苦戦している。
コストコはTモールで仮想店舗を設置することにより、実店舗を持たずにリスクの低い方法で中国の消費者の購入動向を調べることが可能になる。
コリアーズ・インターナショナルの小売り部門担当、アンジー・ソランキ氏は、コストコの仮想店舗について「ウォルマートのような大手企業の失敗や、ホームデポなどの(中国)市場撤退から、コストコが教訓を得たことを示している」と述べた。
ウォルマートの第2・四半期決算では、中国の売上高は1.1%増となったが、重要となる既存店の売上高は1.6%減だった。同社の国際部門責任者、デービッド・チーズライト氏は15日に開催された投資家会合で、進出から17年経過しても中国市場は依然として厳しいと指摘。「現在でも基盤固めに焦点を当てている」と述べた。
今年1月にはサプライチェーンをめぐる問題も発生。人気のあったロバ肉製品からキツネ肉の痕跡が検出され、ウォルマートは同製品を回収した。
    <予想される価格競争>
Tモールは世界の個人向け取引(B2C)市場で最も急速に成長しているサイトの一つで、中国でのシェアは50%に上る。Tモールで展開されるブランド数は10万を超える。
コストコは、定評があり利益率の高いプライベートブランド「カークランド」の商品を中国市場に投入する。同ブランドは男性用衣類や洗剤など多くの商品を揃えており、品質を重視する中国人消費者をターゲットにしている。
しかし、ウォルマートが株式の過半数を所有する通販サイト「1号店」との価格競争は激化が予想される。コストコはTモールで歯磨き粉「センソダイン」4パックを145人民元(約24ドル)で提供したが、「1号店」の価格は109元だ。
中国進出を果たした外国企業が中国政府と対立する事例もある中、コストコが中国経済の成熟の象徴であるアリババとパートナー関係を構築することは、政治的な利益をもたらす可能性もある。
    <物流面で懸念も>
ただ、アリババとの事業連携にもリスクは存在する。
物流コスト削減と配達時間縮小のため、コストコはTモールの倉庫を活用する計画だが、これはウォルマートが直面したような物流面での問題を生じさせる可能性がある。
コリアーズのソランキ氏は「サプライチェーンの大半をアリババに任せることは短期的にはよい解決策となる」とした上で、「中国では(製品の)安全性は大きな問題となっており、適切に管理できるかどうかが重要だ」との考えを示した。    
    

Nandita Bose記者 翻訳:本田ももこ 編集:加藤京子

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab