コラム:中国の「大誤算」、ベネズエラ混迷で巨額投資があだに

Christopher Beddor
[香港 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ベネズエラは、中国外交にとって手痛い教訓となるだろう。世界最大の確定石油埋蔵量を誇るベネズエラは、巨額を投じる中国マネーの最大級の受益国となっていた。
中国の「賭け」は今や、政治的混乱と米国による国営石油会社PDVSAへの制裁によって、直撃を受けている。さらに悪いことに、中国マネーが支えた政権は、狙いであった石油産業を停滞させた。
原油に引き寄せられた中国は、当時チャベス大統領が率いていたベネズエラ政権の全面的な支援に乗り出した。そして現在、野党指導者フアン・グアイド国会議長と対立するマドゥロ大統領を支持する立場にある。
中国がこの賭けで失うものは数多い。
ロイターによると、中国はこの10年で総額500億ドル以上(約5兆4600億円)をベネズエラに投じている。中南米地域における中国マネーの提供先としては、飛びぬけた額であり、世界的にも最大級の支援先だ。2007─2014年に中国政策性銀行が行った同地域向け融資の半分以上がベネズエラに対して行われていた、と米シンクタンク、ブルッキングス研究所のデービッド・ダラー氏は指摘する。
この関係が暗転したのは、原油価格の下落によって、ベネズエラが壊滅的な「負のスパイラル」への転落を始めた2015年ごろのことだ。
ベネズエラ政府が返済条件の緩和を求め、中国側もこれに応じたが、新規資金の流入は枯渇した。
いま、この「賭け金」がすべて失われようとしているかのように見える。無節操な政権に対する中国の賭けは、石油生産を停滞させ、世界の原油価格の高騰を招いた政府を支える結果を招いた。これにより、中国自身の利益も損なわれた。
突然さほど賢明だと受け止められなくなった中国の対外投資案件は他にも存在する。過去1年だけでも、マレーシアやパキスタンでの政権交代により、過去の対中取引に調査が入ったり、透明性を求める圧力が強まったりしている。ベネズエラもいずれ同じ道をたどることは想像に難くない。
ベネズエラからアンゴラに至るまで、中国は自国の原材料需要を満たすために、非倫理的な政権と何年も取引を続けてきた。賄賂や汚職の防止を巡る懸念に対する関心が欠如しているとして、西側の政府関係者らによる頻繁な批判にさらされてきた。
だが、ベネズエラやマレーシアの事例が示すように、長期的に見れば、清廉な取り組みの方が、厄介なサプライズに対する賢明な保険となる可能性が高い。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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