コラム:米ツイッターのIPO、フェイスブックとは対照的

コラム:米ツイッターのIPO、フェイスブックとは対照的
11月7日、短文投稿サイト運営大手の米ツイッターの株式市場へのデビューは、フェイスブックと対照的だった。写真はニューヨーク証券取引所で同日撮影(2013年 ロイター/Lucas Jackson)
Robert Cyran
[ニューヨーク 7日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 短文投稿サイト運営大手の米ツイッターの株式市場へのデビューは、フェイスブックと対照的だった。
最大手ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)企業をマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が2012年に新規株式公開(IPO)した際、人々は度を超えた資本主義に大騒ぎした。これに対してツイッターは期待を慎重にコントロールした。
しかし両社のIPOでは、いずれも不信感と信頼感が奇妙に入り混じった状況が生まれ、こうした心理がバンカーや支援者、役員や将来の投資家たちの間を駆け巡った。それでも、流行の先端を行くIPOとなると、誰もが最新の歴史的出来事として舞い上がってしまうようだ。
フェイスブックの上場では、内部の関係者たちが最大限の取り分を得て、残った分け前はわずかだった。主幹事のモルガン・スタンレーは非常に高い売り出し価格を設定し、その後価格を引き上げた。その結果、投機熱の中で投資家はまんまとだまされた。
内部関係者がフェイスブック株を投げ売りし、調達資金の大半は彼らの懐に入った。理由は同社を取り巻く事業モデルの不透明感。当時は成長ペースが減速し、モバイル端末向け広告事業の拡大が同社の脅威となっていた。ザッカーバーグCEOは、翌日に控えた結婚式の方が気掛かりだったようにも思える。スーパー議決権株を持つCEOは、一般株主を無視できたのだ。ナスダック市場の初値は期待を大きく裏切り、あっという間に時価総額の半分が消滅した。
これに対しツイッターは上場の際、新規の投資家に報いるために多くの微調整を行った。関係者が将来得る分け前を後回しにしたのだ。スポンサーは株式を売り急がないため、調達資金のすべてはツイッターの野望を前進させるために使われる。
ツイッターのユーザーはフェイスブックが上場した当時の4分の1に満たないこともあり、一般投資家の熱狂は比較的控えめだった。主幹事のゴールドマン・サックスは当初売り出し価格のレンジを低めに設定し、その後に引き上げたが、実際の株価はそれを上回った。今後一段の上昇も期待できそうだ。
両社の差は偶然の結果ではない。フェイスブックはIPOによって以前からのスポンサーのために最大限の資金を調達する短期的な目的を果たした。それによって同社の評判は傷付き、従業員の士気は低下し、他のハイテク企業の多くに株式公開を思いとどまらせる結果となった。ただ、その後はモバイル広告事業の重要性に目覚め、時間を経るにつれて痛みは消えた。IPOから1年後に株価も最高値を更新している。
一方、ツイッターの手法は、明らかに将来株式を購入してくれる投資家に対しての恩恵が大きい。早い時期にツイッター株を取得する投資家にとってこれが賢明な手法かどうかは定かではない。ツイッターは赤字会社で、その企業価値は今後の成長と投資家心理で決まる。もし事業が崩壊したり、投資家が幻滅すれば、長期の支援者が儲けを手にする前に価値が大きく低下する可能性もある。それは次のホットなIPO企業には新たな教訓になろう。
●背景となるニュース
*ツイッターは6日、新規株式公開(IPO)価格を1株26ドルに設定したと発表した。7000万株を売り出し、引き受け幹事は1050万株を追加購入するオプションを行使できる。売り出し株と制限株、オプション行使を含めた時価総額は約180億ドルに上る。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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