金利格差の影響力強まる人民元フォワードカーブ、中国資本勘定自由化で

[上海 3日 ロイター] 中国が資本勘定の開放を進めている結果、オンショアの為替フォワード市場では、カーブを形成する要因として、人民元相場の見通しに代わって金利格差の役割が高まっている。
人民元のスポット相場は今年になって0.8%下落し、先安感も広がっている。一部のアナリストは人民元の先安観がフォワード相場も押し下げているとみているが、フォワード相場下落の理由はそれだけではなさそうだ。
多くのトレーダーやアナリストは、中国のフォワードカーブは、資本勘定が完全に自由化されている先進国のカーブと同じ動きを示す傾向が強まっていると指摘する。
つまり、金利格差がドル/人民元のフォワードカーブを左右する主たる要因になっているというわけだ。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの金利ストラテジスト、エサン・モウ氏は「以前は、人民元相場については誰でも上昇すると考えていた。その結果、フォワードカーブに歪みが生じていたが、現在は人民元が均衡レベルに達したとの見方が浸透している。そのため、人民元相場に双方向の動きが生じ、カーブは徐々に金利格差を反映するようになりつつある」と説明している。
<急転回>
ほぼ1年前の2011年8月末時点では、1年物の人民元フォワード相場はプレミアムが585ポイントに達しており、スポット相場に比べはるかに高い水準にあった。
だが、状況はその後急変し、ドル/人民元のスワップポイントは1360ポイントに達し、人民元が大幅にディスカウントされた水準となった。
今年になって、人民元とドルの金利格差は、人民元フォワード相場のディスカウント幅拡大とほぼ足並みをそろえた動きを示している。
中国当局は今年になって金利と預金準備率を2度ずつ引き下げているが、緩和ペースは市場が予想していたほど積極的ではなく、8月中旬にはインターバンク金利が急上昇した。
同時に、人民元相場の下落を受け、中国の輸出業者がこれまでのようにすぐに受け取ったドルを人民元に交換しようとはせず、ドルのまま保有する傾向が広がったため、オンショアのドル金利が急低下している。
ドル預金の急増はドルの調達コストを押し下げ、オンショア市場における1年物ドル預金金利は5月末の4%から1.55%まで低下した。
金利格差がフォワードレートに重大な影響を及ぼすようになった主因は、中国が今年になって資本市場の開放に向けた措置を段階的に進めていることだ。
これまではドルから人民元への交換が規制され、投資家は人民元の高金利を利用した「キャリートレード」ができなかったが、そうした裁定取引が可能になれば、金利格差が為替のフォワード相場に影響を及ぼすようになる。
<不透明感>
もっとも、今後の金利動向、変動の幅、ドル/人民元のフォワード相場の行方については、見解が分かれている。
中国当局は市場金利の押し下げを目指した預金準備率の積極的な引き下げをためらい、積極的な緩和策を講じるとの市場関係者の見方に反する行動を取っているが、リバースオペなど他の手法を通じて銀行システムの流動性を支えており、インターバンク金利は8月中旬につけた高水準から低下しつつある。
ドルの金利見通しについても不透明感が高い。米連邦準備理事会(FRB)が新たな量的緩和策に着手すれば、ドル金利が低下し、人民元金利との格差が拡大する可能性がある。
だが、最近の米国の経済指標は強弱まちまちで、FRBの政策を確信を持って予測するのは困難になっている。

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