中国と香港の貿易データの差が拡大、為替の裁定取引を偽装か

中国と香港の貿易データの差が拡大、為替の裁定取引を偽装か
 1月28日、中国・香港の統計当局がそれぞれ公表した輸出入データの差が、12月に急増していたことが分かった。写真は中国国旗、上海で2015年1月撮影(2016年 ロイター/Aly Song)
[香港 28日 ロイター] - 中国・香港の統計当局がそれぞれ公表した輸出入データの差が、12月に急増していたことが分かった。中国政府が資金流出を抑えようとする中で、一部の市場参加者が貿易を偽装して資金を国外へ持ち出しているのではないかとの懸念が出ている。
中国税関総署のデータでは、香港からの輸入は12月に前年比64%増加したのに対し、香港統計局が公表したデータでは本土向け輸出は0.9%増にとどまった。双方のデータの食い違いはこれまでもあったが、ロイターの調べによると、双方の公式データ間の差は絶対ベースで2006年の調査開始以来最大となった。
同様に、中国のデータによると香港への輸出は11%増となったのに反して、香港のデータによる本土からの輸入は1%減と大きく食い違っていた。
アナリストらは、市場参加者がオンショアとオフショア市場での人民元のスプレッドが拡大していることを利用し、クロスボーダーでの金融裁定取引を貿易取引に偽装している可能性があるとみている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(香港)の上級エコノミスト、レイモンド・ヤン氏は「貿易統計の食い違いは、貿易チャネルを利用した金融アービトラージが行われていることを示唆している」とし、貿易データを大幅に膨らませることで、トレーダーは海外へ移動する資金枠を拡大させているかも知れない」との見方を示した。
オンショアとオフショア市場の元相場のスプレッドは今月、1400ピップ程度と11年9月以来の水準に拡大している。

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