「不登校を3週間で解決」うたう民間業者に医師が警鐘。運営元の代表を直撃すると“まさかの返答”
2023年に文部科学省が公表したデータによると、2022年度の小中学生の不登校の児童生徒数は約30万人に上り過去最多となっています。そのうち、学校内外で相談や支援を受けられていない児童生徒は約11万4000人で、不登校について相談ができずにいる親子が多いことがうかがえます。
児童精神科医が「子育てが不安なお母さん」に伝えたい 子どもが本当に思っていること』の著者「精神科医さわ」こと塩釜口こころクリニックの河合佐和院長に、スダチの問題点や疑問点、相談先の選び方について聞きました。
2024年8月13日、スダチが「板橋区と株式会社スダチが連携し不登校支援を強化」というプレスリリースを発表したことが騒動の発端でした。
SNSを中心に「登校をさせれば解決するわけではない」「無理に再登校をさせるのは逆効果」といった批判の声が集まり、板橋区は同日に公式サイトでスダチとの連携を否定する声明を発表。スダチ側は当リリースを削除し、8月21日に連携の発表した経緯を説明するリリースを出しました。
スダチの公式サイトには「再登校までの平均日数17日」「顧客満足度97.8%」「再登校できた子ども90%」とあり、また「他の不登校支援サービスとの比較」の表では再登校がゴールではない他のサービスとは違い「短期間での再登校が可能」であることが強調されています。
完全オンラインでスダチの「サポーター」と呼ばれるスタッフが保護者とのカウンセリングを行い、各家庭専用の特別プログラムを組み、それを実践するための具体的なアドバイスを伝えるといったサポート内容で、サポーターが子ども本人とは接触しないことも、大きな特徴の一つです。
料金は、公式サイトでは「4.5万円~」とされていますが、東京新聞が8月17日に公開した記事ではスダチを利用した女性による「利用料は総額40万円超と高額なのに正式な契約書はなく」といったコメントも紹介されており、ケースによって大きくばらつきがあるようです。
児童精神科医のさわ先生に、スダチについての見解を聞きました。
毎月約400人の親子の診察を行っているというさわ先生は「再登校の先にあるリスク」を指摘します。
「『自殺で亡くなってしまった不登校経験者のうち、約75%が学校に再登校していた』という研究結果(※1)もあります。再登校することにより、『過剰適応』(置かれた環境に自分を合わせようとしすぎてしまうこと)の状態となり、身も心も限界となり、逃げ場がなく追い詰められてしまうことや、長期的な視点に立った支援の必要性が専門家たちによって指摘されています。スダチが再登校をした後の継続的なケアをどの程度行っているのか、非常に気になります。
不登校児の支援において親子関係に焦点を当てることは、必ずしも間違いではなく、親御さんにお子さんへの対応の仕方を助言することは診察室でもあります。しかし、親側からだけの情報をもとに親子関係に介入することで、子どもの精神状態がさらに追い詰められてしまうケースもあり、慎重に行う必要があると私は考えます。
そして、もっとも気をつけなければならないのが、命を失ってしまうリスクがあることです。不登校となる子どもの中には、知的レベルが境界知能域であったり、軽度の遅れがあったり、また学習障害や自閉スペクトラム症、ADHDなどの何らかの発達障害の特性があり、学校が特性にあった環境となっていないことが原因であるケースもあります。
支援をするうえで、必要に応じて子どものそういった生まれ持った脳の特性や精神状態を評価し、その子どもに合った適切な環境をゴール設定とすることが何よりも大切だと私は考えます。子どもの不登校によって追い詰められた親御さんへのサポートも、もちろん大切ですが、何より学校に行くのは子どもなのですから、子どもへの介入も必要だと考えています」(以下、さわ先生)
※1「心理学的剖検データベースを活用した自殺の原因分析に関する研究」(研究代表者:国立精神・神経センター 精神保健研究所 加我牧子)より
子どもの不登校に悩む親のなかには、民間の不登校支援業者を利用するケースもあります。最近では、「株式会社スダチ」という不登校支援事業の企業が話題を集めました。完全オンラインで「不登校を平均3週間で解決する」と謳うサービスですが、ネット上では賛否両論が巻き起こっています。
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