ワールドシリーズ第6戦で先発し勝利投手となった山本由伸(10月31日トロントで、写真:Imagn/ロイター/アフロ)
WSJも山本を「勇敢な鉄人」と絶賛
大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希の日本人3選手を擁するロサンゼルス・ドジャースは11月1日(日本時間2日)に敵地トロントで行われたブルージェイズとのワールドシリーズ(WS)第7戦を延長11回「5-4」で制し、悲願の連覇を達成した。
最大の立役者はワールドシリーズのMVP(最優秀選手)に輝いた右腕、山本だった。
第2戦で完投勝利を収め、中5日で先発した第6戦も6回1失点で白星。そしてこの日は「中0日」で9回途中から2回と3分の2を投げ、救援投手として勝ち星を挙げた。
米国のスポーツ・メディアだけでなく、最有力経済紙の「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ)ですら次のように書いた(電子版からの要約)。
●山本由伸は休養日ゼロで8アウトを奪って第7戦を制した。ワールドシリーズの歴史に名を刻んだドジャースのエースだ。
●前の登板からわずか24時間足らずで、山本はワールドシリーズ史上最も勇敢で信じがたい鉄人級の投球を披露した。
(Los Angeles Dodgers Ace Yoshinobu Yamamoto Makes World Series History - WSJ)
203の国と地域、16言語でテレビ中継
ワールドシリーズ第1戦の推定総視聴者数は米国だけで約1330万人、米国とカナダ、日本の合計が約3260万人。203の国・地域、16か国語でテレビ中継された。
第7戦の視聴者数はテレビ中継とストリーミングを合わせて2733万人、ピーク時には3300万人が視聴したと米FOXスポーツが伝えている。
2024年のMLB総収入は121億ドル。同年のポストシーズン「選手分配プール」総額は約1億291万ドルで、ドジャースが配分されたのは約4647万ドル。今年はこの額を上回るかどうか。
(US World Series viewers drop 14% for first two games of Dodgers-Blue Jays matchup | AP News)
(Global viewership for 2025 MLB postseason registering big audiences)
ブルージェイズの中心選手は中南米系
勝ったドジャースは11月2日(現地時間)、ロサンゼルスに凱旋した。
カナダ唯一のMLB球団であるブルージェイズは、32年ぶりにワールドチャンピオンを狙ったが最後の最後で敗れた。
親子2代のスラッガーであるウラディミール・ゲレーロ・ジュニア(ドミニカ共和国)に加え、アンドレス・ヒメネス(ベネズエラ)、ホセ・ベリオス(プエルトリコ)、アレハンドロ・カーク(メキシコ)と、主力の中南米選手の活躍で勝ち抜いてきた。
そもそも、なぜカナダに米国のリーグであるMLB球団があるのか。
その背景には、1970年代の北米経済と政治、メディア環境の変化がある。カナダが安定的な経済成長を続け、カナダの人口、企業がトロントに集中、トロントは北米第4の都市にのし上がった。
その結果、広告・放送市場は拡大し、テレビ放映権料も急増した。
MLBも安定的な外国市場を築くべく、リーグ拡張の絶好の機会ととらえて1977年にトロント・ブルージェイズの加盟に踏み切った。
当時、米メディアは「米加関係の友好を示すソフトパワー」「北米経済統合のシンボル」と称えた。
実は、カナダの球団として最初にMLB加盟したのは1969年のモントリオール・エクスポズだった。
しかし、ファン離れ・観衆動員数激減、資金難、球場施設の老朽化で球団存続の危機に直面、一時的にMLB機構に買い取られる形で2005年、米ワシントンDCに拠点を移し、ワシントン・ナショナルズとして再出発している。
一方のブルージェイズは、戦力アップを続けて球団創設15年後の1992年、93年と2年連続でワールドチャンピオンに輝いた。