CentOSプロジェクトが、「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)のリビルド版である「CentOS Linux」から、最新版のRHELの少し先を先行する「CentOS Stream」に軸足を移すと発表した際、多くのCentOSユーザーは憤慨した。
Hacker Newsのトピックに付いた最初のコメントは次のようなものだった。「自分が事業を運営していて、10年間使えるという約束を当てにして『CentOS 8』を導入したと想像してほしい。今回の事態で、あなたは窮地に追い込まれるだろう。Red Hatもそれは分かっているはずだ。このような変更をするなら、なぜ『CentOS 9』からにしなかったのか????オブラートに包むのはやめよう。彼らは私たちを裏切ったのだ」
Reddit/Linuxには、「私たちのオープンソースプロジェクトは、『CentOS 4』の時から最新版のCentOSを使用してきた。私たちの主力製品はCentOS 8で動いており、私たちは、約束されていた2029年5月31日までサポートが続くことに全てを賭けていた」という書き込みがあった。
フォロワーが20万を超えている人気のTwitterアカウント「The Best Linux Blog In the Unixverse(@nixcraft)」のツイートには、「OracleによるSun(Microsystems)の買収で、『Solaris』というUNIX系OSやSunのサーバー/ワークステーション、MySQLが/dev/nullという虚無のかなたに消え去った。そしてIBMによるRed Hatの買収で、CentOSも>/dev/nullへと消え去ることになる。自らの心にとどめておいてもらいたい。OracleやIBM、Microsoftといった大手ベンダーやその他の企業があなたのお気に入りソフトウェアを手に入れてしまったら、即座に移行作業に着手すべきだ」と記されている。
お気に入りのLinuxを取り上げられてしまうのはIBMのせいだという、憤慨したCentOSユーザーのこうした声に多くの人々が同調している。その一方で、Red Hatはオープンソースを裏切ろうとしているという声も上がっている。
Red Hatの最高技術責任者(CTO)Chris Wright氏は、CentOS Streamが導入された際、「開発者は、(中略)早い時期からのコードへのアクセスや、幅広いパートナーコミュニティとのより充実した透明性の高い協力関係や、RHELの新しいバージョンの方向性に影響を与える手段を必要としている。CentOS Streamは、そのような機会を提供することを目的としたものだ」と述べていた。
CentOSをめぐるRed Hatの動きの理由をひと言で述べると、RHELコードの開放だ。CentOSの立ち上げ時からの運営委員会メンバーであり、「Fedora」ディストリビューションの長きにわたるコントリビューターでもあり、Red Hatでシニアコミュニティーアーキテクトを務めるKarsten Wade氏は以下の見解を強調した。
RHELの開発そのものは、Red Hatのファイアウォール内に閉ざされたままとなっている。この状況はほぼ20年間変わっていない。オープンソース開発のエコシステムにとってこれは重要であるとともに、しばしば痛みを伴うギャップとなってきた。オープン性にまつわるこのギャップは2003年から変わっていない。
ここから現在、そしてわれわれが今まさに直面している状況の話につながる。プロジェクトの重心をCentOS Streamに移すという動きは、オープン性にまつわるこのギャップをいくつかの重要な方法で埋めることを意味している。詰まるところRed Hatは、CentOSの位置付けをRHELのダウンストリームから、RHELのアップストリームへと移すことで、FedoraとRHELの間に存在する開発やコントリビューションのギャップを埋めようとしているのだ。