Interop Tokyo 2019が6月12~14日の3日間、千葉・幕張メッセを会場として開催された。毎年恒例のイベントだが、注目度の高さは相変わらずのようだ。2019年は同じ幕張メッセを会場に同じ日程で「AWS Summit Tokyo 2019」が開催されていたこともあってか、とにかくやたら人が集まっていた印象だ。ここでは舞台裏でありかつ主要展示の1つでもあるInterop独自の「ShowNet」について紹介しよう。
メンバーが詰めているSTM(ShowNet Team Member)ルームやNOC(Network Operation Center)ルーム
InteropとShowNetは、切っても切れない関係と言えるだろう。Interop自体のスタートは1986年で、まだ黎明期にあったインターネット/ネットワークに関心を持つ学識者やエンジニアが集まり、持ち寄ったネットワーク機器を相互接続して「Interoperability(相互接続性)」を検証する場として開催されたのが、その後の歴史の出発点だ。
1994年に日本初のInteropが開催された際のキャッチフレーズは、「I Know it works because I saw it at Interop.――実際に動いているところが見たい。ここに来ればそれがわかる。」というものだ。
様子を外から見ることができ、いわば「体を張った展示」状態になっている
このエピソードもこれまで繰り返し紹介されており、よく知られているとはいえ、実は現在、世界各国で開催されているInteropのうち昔ながらの形でShowNetが継続しているのは東京だけだという。他国では、規模としてもあまりに手間が掛かり過ぎて運営を続けることができなかったのだろうと想像されるが、今ではベンダーの壁を越えた大規模なネットワーク環境を構築し見せるShowNetが日本のみだとすれば、その見学だけでも会場に出かける価値があるといえるかもしれない。
そのShowNetは、かつて「標準仕様の解釈の相違などに起因する互換性問題を発見し、解決していく場」という位置付けだった。ずいぶん昔のことだが、ShowNetにはネットワーク機器ベンダー各社が正式出荷前の最新製品を持ち込むとともに、トップレベルのエンジニアも集まっており、実際につないでみて問題が見つかると、その場でファームウェアのコードを書き直して修正する、という作業をやっていると聞いたことがある。いわば、製品出荷直前の最終品質チェックの場として機能していた時代があったわけだ。
NOCに隣接して設けられた「ShowNetラック」の様子。ラック群は「エクスターナル/バックボーン」「テスタ」「サービスチェイニング」「ファシリティマネジメント」「モニタリング/セキュリティー」「出展者収容」「ワイヤレス」「クラウド/データセンタ」という大きなテーマ毎にまとめられて計20本が並んでいた。ぞれぞれのラックの全面が見える窓の隣にはホワイトボードが設置されており、担当者直筆の詳細説明がある。多くの見学者がこの文を隅々まで熟読している
しかし、現在では互換性問題の解決というよりは、むしろ「2、3年後の普及技術を先駆けて挑戦」という意味合いが前面に押し出されている。ShowNetは、展示会場内の各社のブースで使われるネットワークインフラであり、来場者にインターネット接続サービスを提供するためのWi-Fiサービス網であり、かつ将来の技術のテスト場であるわけだ。
今回のネットワーク規模を示す数字を幾つか紹介すると、「機器台数 約2000台」「のべ動員数 447人」「ケーブル総延長 約21.0km(UTP)/光ファイバー総延長 約5.5km」などとなっている。また、見所としては、「High Density Facility(ファシリティーのさらなる高密度化)」「400Gbps Ethernetの相互接続と実運用への導入」「最新ルーティング技術『SRv6』によるサービスチェイニング」「IEEE 802.11ac Wave2/11axを用いた柔軟な無線空間のデザイン」など、さまざまな要素が紹介された。
Interop Tokyo 2019のShowNetの規模を示すさまざまな数字が紹介された
また、昨今のサイバー攻撃の高度化を意識してか、セキュリティーやモニタリングにも注力されていたほか、大容量のトラフィックを生成できるテスト機器などを使ったパフォーマンス測定/各種テストが行えるようになっているのもShowNetならではの取り組みといえるだろう。
展示会場の一角に設けられたShowNetのエリアでは、ShowNetメンバーが詰めている「STM(ShowNet Team Member)ルーム」や「NOC(Network Operation Center)ルーム」に隣接して用途ごとに整理されたラックが20本配置され、それぞれのラックの担当者による手書きの「見所紹介パネル」も用意されるなど、見せ方にも工夫が見られた。
取材当日は会期最終日ということもあり、来場者数自体がかなりかったようだが、ShowNetのエリアも常時ほぼ全てのラックの前に人だかりができているような状態で、写真を取るのも一苦労といった状況であった。来場者の関心も高いようなので、既にワールドワイドでも日本でしか行なわれなくなったというShowNetが今後も毎年実施されることを期待したい。
「コアネットワーク」のラック。「ShowNet史上初 400GEサポート」という文字が眩しい