展望2020年のIT企業

新規ビジネス創出を海外子会社に託す富士通とNECの現実

田中克己

2018-11-22 06:30

 富士通とNECが海外子会社に新規ビジネスの創出を託し始めた。現在の組織体制の中で、新規ビジネスを生み出すのは難しいとし、富士通はカナダのバンクーバーに、NECは米国シリコンバレーにそれぞれ現地法人を立ち上げて、注力事業の商品開発に取り組むスタートアップや大学、研究機関などとの協業を積極的に推進する。人材と資金の獲得にも乗り出す。構造改革から脱し、成長へ転換する決め手になるのか。

若手を登用するNEC、AIを任せた富士通

 NECで新規ビジネス開発を担う藤川修執行役員は11月の同社主催シンポジウムで、「中央研究所などに優秀な研究者はたくさんいるが、研究の成果が事業に結び付かない」と課題を吐露した。事実、この十数年は事業の売却や縮小などの構造改革が続き、売り上げは最盛期の半分近い3兆円を割り込んでしまった。

 そこで、研究所などで生まれた“タネ”をシリコンバレーでソリューションに育てる作戦に切り替えることにした。その事業化を支援するのが2018年7月にシリコンバレーに設立したNEC Xだ。同社の最高経営責任者(CEO)でもある藤川氏は「とんがった技術で、スタートアップを創り出す」とし、人材や資金の調達に奔走しているのだろう。現在、画像認識など3つの新規ビジネスが走り始めており、1年程度での起業と、3~5年での事業化を目論む。

 立ち上げるベンチャー企業のCEOに、NECの研究者や技術者を就けることもある。例えば、2018年4月にシリコンバレーに設立したデータ分析プロセスの自動化ソフトを開発するdotDataのトップに、中央研究所でAI(人工知能)研究に携わってきた30代の藤巻遼平氏を就けた。「(NECが)生まれ変わる一歩だ。世界で戦えるプロダクトを開発する」と、藤巻氏は設立会見で意気込みを語っていた。

 一方、富士通は11月、グローバルに通用するAI商品の開発拠点として、富士通インテリジェンス・テクノロジーをバンクーバーに設立した。同社CEOに就任した吉澤尚子執行役員常務は、バンクーバーにAIビジネスの本社機能を置いた理由を、AIや量子コンピューターの研究機関や研究者がたくさんいることを挙げる。人材の確保しやすい環境に加えて、シリコンバレーに比べて、賃貸料や労務費が安いことも魅力だという。「北米のAI投資は日本の20倍弱もある」とし、ベンチャーキャピタルなどからの投資も期待する。

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