ミック経済研究所は3月22日、国内のデータセンター(DC)市場と消費電力量に関する調査「データセンター市場と消費電力・省エネ対策の実態調査」を発刊したと発表した。今回の調査は2015年12月から2月にかけて実施した。
日本国内のDC市場の売上高やデータセンターの消費電力量、延床面積、省エネ対策などについて、主要DC事業者31社の面接取材による個別実態調査とデスクワーク調査14社のデータにより全体を推計した。
同調査におけるDC市場は「ハウジング、ホスティング、クラウド(SaaS・ASP、PaaS、IaaS)サービス関連売上」として算出。また、DC消費電力量は「IT機器系消費電力量:DC内のサーバ、ストレージ、ネットワーク機器などの消費電力量」「ファシリティ系消費電力量:DC内の空調機、電源設備(UPS他)、照明、その他設備の消費電力量」としている。
DC市場とDC消費電力量の推移予測(2014~20年度) (ミック経済研究所提供)
調査結果の概略は以下の通り。
2015年度の国内DC市場は、前年度比8.0%増の1兆8394億円となる見込み。ユーザー企業がDCを利用する意向は2016年度も継続し、同年度の市場規模は1兆9361億円(前年度比5.3%増)と予測。
今後もユーザー企業のIT環境において、クラウドと物理サーバを統合したシステム構築により、DC活用が拡張することで、年平均成長率4.4%増で成長することが見込まれる。その結果、2020年度には2兆2807億円となる見通し。
一方、国内商用DCの消費電力量は、2015年度で150.8億kWh(7.6%増)の見込みで、DC市場の成長率8.0%増と比較すると、消費電力量の成長率が0.4ポイント分低くなっている。消費電力量は年平均2.7%増と売上高の成長性を下回りながら増えていき、2020年度で171.9億kWhとなる見通し。
データセンター市場とデータセンター消費電力量の推移予測および各前年度比(ミック経済研究所提供)
IT機器はクラウドや仮想化技術で集約化が進んでおり、ラックあたりの実効消費電力はわずかながら上昇傾向にある。DC利用が増える分、稼働ラック数も増えることから、売り上げに準じてIT機器系消費電力量はアップしていく。
またファシリティでも、ラック稼働増加に対応するため、空調や電源系の消費電力量は上昇する。中でも、継続的に行ってきた省エネ対策の効果や、省エネ効率の高い新型DCの稼働率が上がったてきたことにより、ファシリティ系消費電力量のアップを抑えられる。
ここ数年間で新設されたDCの大きな消費電力の削減効果が期待された対策としては、「外気冷却」の導入が進められてきた。本調査対象事業者が保有する主要DC110拠点のうち、40拠点(36%)が外気冷却を利用、21拠点(19%)が外気を直接的にサーバルーム取り入れる方式を採用していることが分かった。
直接外気冷却システムを利用しているDCでは、部分的であるが、一定の省エネ効果が得られているとされる。ただし、直接外気冷却は、年間の温湿度の差が激しい日本においては温度や湿度のコントロールに一定のノウハウが必要となること、また、外気取入の設備設置には通常のDC建築に追加投資が必要となることなどが課題となる。
同社では、今後の新設DCにおいて、現在までにノウハウを蓄積したDC事業者の空調方式の一選択肢となることも想定されるとしている。