現在、クラウド移行を進める企業の間ではハイブリッドクラウドが主流となりつつある。ハイブリッドクラウドでは、多種多様なオンプレミスのシステムが、オフプレミスのクラウドサービスによって強化されるが、最近実施された調査により、このアプローチ自体がシステム統合における障壁となり、企業の大半が手作業による統合を強いられているという実態が浮き彫りとなった。
この調査は、システム統合の専門企業であるScribe Softwareと、ITプロフェッショナル用のオンラインコミュニティーサービスであるSpiceworksが共同で、300社のITリーダーに対して実施したもの。その結果、実に全体の3分の2にあたる59%の企業が、オンプレミスシステムとクラウド間のデータ同期に何らかの不満を抱えていることが明らかとなった。企業の多くはレポートやアナリティクスなどの機能を求めてハイブリッドクラウドを導入するが、そもそもスムーズなデータ同期なしにこれらの機能を実現するのは困難だ。
その一方で、システム統合の問題解決に対する経営陣の関心は驚くほど薄い。オンプレミスシステムとクラウドの統合を最優先事項だと回答した企業は、全体のわずか16%だ。そのため、IT部門はカスタムコードを手作業で開発して急場をしのいでいるのが現状で、カスタムコードに大きく依存していると回答した企業は全体の54%に上った。ちなみに2年前に実施された同様の調査では、カスタムコードに依存している企業の割合は48%だった。これらの結果に対して、調査では「企業はカスタムコード開発に要するコストを過小評価する傾向にある」と分析している。
CRMはオンプレミスシステムとクラウドの統合が最も活発に行われている分野の一つだが、それでも連絡先データベースの統合とカスタマーサービスの統合が完了したと回答している企業がそれぞれ28%と26%あるだけで、システム全体の統合が進んでいるとは言い難い結果となった。ERPやBIなど、中核的なシステムとCRMの統合が完了したと回答している企業は20%以下で、それらの統合に手を付けていない企業も20%に及んでいる。
調査を実施したScribe Softwareは、企業がハイブリッドクラウド導入を効率的に達成するアプローチとして、PaaS(Platform-as-a-Service)の活用を推奨している。これは、多種多様なオンプレミスシステムとクラウドを、クラウドのリソースで相互にリンクさせる手法だ。いわば、クラウドとの統合に別のクラウドを活用する形だ。いずれにせよ、オンプレミスシステムとクラウドの統合をスムーズに達成するには、手作業のカスタムコード開発に頼るのではなく、より自動化されたアプローチが不可欠だ。
オンプレミスとクラウドの各種アプリケーションに加え、各部門が個別に契約している複数のクラウドサービスが複雑に交錯する中、ITリーダーは経営陣に対して、統合作業に充てるリソースを増やすよう説得する必要がある。さらに、クラウドサービスの重複による複雑化を解消しコスト浪費を抑えるため、ガバナンスやサポートも強化する必要がある。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。