米Amazon Web Servicesは今週、年次ユーザーイベント「AWS re:Invent 2015」を米ラスベガスで開催している。初日の基調講演では、企業が持つ既存の基幹システムをAWSに移行することの現実性を強調し、関連する多数の新サービスを発表した。また、初のビジネスインテリジェンスサービスの提供も明らかにした。
AWSのシニアバイスプレジデント、Andy Jessy氏
「データベースとの悪い関係からの脱却」。AWSのシニアバイスプレジデント、Andy Jessy氏はリレーショナルデータベース(RDB)分野について、クラウド化への動きがゆっくりだったと説明。その上でOracleをやり玉に上げ、「既存のRDBはユーザー企業にとって高価でロックインを伴うものだった」と言い切った。
2014年のre:Inventで発表したAWSのRDB「Aurora」が、MySQLの5倍高速で、コストが10分の1であることを強調。「Auroraなしでは顧客と話せない状況になっている」とのこと。基幹システムとして位置づけられることの多いRDBを、AWSはオープンソースと同等の価格で提供することに注力する。新たにAmazon Relational Database Service(RDS)に、MySQL、PostgreSQL、Auroraに加え、10月7日に「MariaDB」を追加することもこの日アナウンスしている。
さらに、企業が既存資産であるオンプレミスからクラウドに移行させる際に発生するマイグレーションで苦労していることに着目し、それを支援する新サービスとして「AWS Database Migration Service」を発表した。オンプレミスからAWSへと、ユーザー権限を保持したりしながら、1テラバイトあたり3ドルで移行できる。ダウンタイムを最小限にするよう工夫しているとのこと。
また、データタイプなども含めてスムーズに移行させるため「AWS Sheme Conversion Tool」も発表した。
基幹系を含め、利用企業の全ワークロードを安心してAWSに持っていけるように、多くの関連サービスを開発。日本通運やNetFlixなど、実行に移した企業が多く出てきていることにも触れた。
このほか、初日の基調講演では次の新製品を発表。エンタープライズ領域のクラウド化に向け、年々着々とサービスを拡充していることが分かる。
Amazon QuickSight
高度な計算とデータの視覚化を実現するビジネスインテリジェンス(BI)サービス。インメモリ技術やマシンコードの作成、データ圧縮などを組み合わせることで、大規模なデータセットに対して双方向のクエリを発行し、迅速に応答を得られるのが特徴。
RedShift、RDS(全エンジン)、Simple Storage Service(S3)、DynamoDB、Elastic Map Reduce、KinesisなどのAWSサービスに保存しているデータセットを自動で探し出すため、ETLツールなどでデータを操作する必要がなくなるといった利点もある。現状は、AWS以外のサービスとの連携はしていない。
なお、SPICE(Super-fast Parallel、In-memory、Comuputation Engine)と呼ぶエンジンをベースに、QuickSightだけでなく、QlikViewやTableau、Tibcoといった既存の他社製品の稼働もサポートする。Active Directoryとの連携やエンタープライズ版での全データ暗号化なども特色となっている。
QuickSightの利用料金は、ユーザー1人当たり月額9ドルから。エンタープライズ版は18ドルからとしている。
Kinesis Firehose
ストリーミングデータをAWSに簡単にロードするためのツール。
Amazon Snowball
ストレージアプライアンス製品。1台につき50Tバイト、10台までつなげで拡張できる。全データの暗号化、データの改ざん防止なども可能。高所から落下しても破損しない丈夫さも特徴としている。
ハードウェア製品がAWSのイメージとやや異なるとの声もあったSnowball
AWS Config Rules
コンプライアンスルールを設定するためのツール。コンプライアンスの要件を満たしていない事象が発生した際に、自動的にアクションを実行するために必要なコンプライアンスルールを準備する。
Amazon Inspetor
AWSでアプリケーションを開発する際に、コンプライアンスやセキュティの観点で問題になり得る事象を自動的に見つけ出す。