ウェブとウェブ、ウェブとモバイル、さまざまなシステムをつなぎ連携させる役目を果たすのがAPIだ。システム間の血液とも言い表せるAPIは、新しい市場を創り出そうとしている。APIエコノミーだ。6月9日にインテルが開いた勉強会では、同社が取り組むAPIビジネスの動向とAPI関連製品が紹介された。
インテル ソフトウェア&サービス事業開発本部長の岡崎覚氏は、インテルが取り組むAPIビジネスについて「アプリケーションとウェブAPIによって新しいビジネススパイラルが起こっている。ウェブAPIは新しいビジネスを創造する重要な構成要素であり、インテルがテーマにする“コネクテッドコンピューティング”の新たな潮流になると思っている」と話した。
インテル ソフトウェア&サービス事業開発本部長 岡崎覚氏
ウェブAPIビジネスというのは、新しいアプリやサービスがAPIを公開し、その公開されたAPIをもとにまた新しいアプリやサービスが創出されるビジネスを指している。Amazonが公開したAPIを利用して、付加価値のあるストレージサービスを作り出したDropboxなどがそうだ。
APIはビジネスの柱になっており、たとえばeBayは、すべての商品リスティングのうち60%がAPI経由であり、APIが売り上げの向上に寄与している。企業ITの分野でも、APIを提供して顧客のクラウドへの移行を促進させているSalesforce.comなどがある。50%以上のトラフィックがAPI経由だという。
Intelは2013年、API管理サービスを提供していたMashery、通信事業者などのサービスプロバイダー向けにAPI管理機能を提供するAeponaを買収。これに、Intelが展開するAPI管理の機能に加えてセキュリティやコンプライアンス管理などの機能をまとめたアプライアンス「Intel Expressway Service Gateway」をあわせて、3つのAPI関連製品として再構成した。
「ユーザー企業は、メディアやeコマース、金融、ビジネスサービス、ヘルスケアなど多岐にわたる。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)についても、数十億のデバイスをセキュアに接続、管理できるAPI、サービスを提供できる。インテルのAPI関連製品群はIoTの重要な構成要素だ」(岡崎氏)
その上で岡崎氏は、日本でのAPIビジネスは米国に比べて未発達だと指摘し、APIを提供できるパートナーと協力しながら、API関連製品を展開していくとした。
インテル 技術本部 データセンター技術部 小佐原大輔氏
インテル 技術本部 データセンター技術部の小佐原大輔氏は、API管理は、APIの提供、実運用で求められることであり、主に(1)APIセキュリティ、(2)サービスの品質維持、価値向上、(3)開発者やパートナーの管理、支援――といった要素で構成されると説明した。
(1)のAPIセキュリティでは、API利用の認証や制限、外部からの攻撃に対する防御を担う。(2)のサービスの品質維持、価値向上では、APIトラフィック量の制限や低レスポンスへの対応、バージョン管理などに取り組む。そして、(3)の開発者やパートナーの管理、支援では、APIドキュメントの提供や利用実績の分析、開発者を集めるための活動などが含まれる。
インテルのAPI関連製品は、オーブンAPIとパートナー利用の部分をMasheryが、企業内やパートナー利用の部分をService Gatewayが、サービスプロバイダー利用の部分をAeponaがそれぞれ担う形になるという。たとえば、Masheryでは主要な機能として「APIポータルの生成」「APIトラフィック管理機能」「APIパッケージ化機能」「API分析、報告ツール」を提供する。
今後の展開としては、APIがウェブからIoTの分野にまで広がってくことに対応することを挙げた。IoTの分野では扱われる情報には個人情報や企業特有の知的財産が含まれていることがあるため、どのような機能や情報をAPI化するかの判断には十分な経験や専門性が必要になるという。そこで、IoT分野に参入する企業がそうした経験や専門性を得るためのファーストステップとして企業内利用のAPIプラットフォームの導入を推進していく。
小佐原氏は「インテルのAPI関連製品は、パートナー向けAPIの構築やオープンAPIを提供するだけでなく、プライベートAPIなどのAPI構築の最初の部分からAPIを支援できる」とアピールした。