Leonis&Co.(レオニスアンドコー)という会社を運営してる伊藤圭史と申します。今回、オムニチャネルの連載を担当することになりました。
連載を始めるにあたり、簡単に自己紹介をします。日本IBMでデジタルマーケティング、顧客関係管理(CRM)領域を中心とした戦略コンサルタントとしてのキャリアを積み、2011年12月にオムニチャネルマーケティングカンパニーとしてLeonis&Co.を設立しました。
現在に至るまでの2年半、オムニチャネル領域に特化して通信会社や百貨店、電鉄などさまざまな企業の支援を行ってきました。この連載では、オムニチャネルに取り組んできた経験に基づき、理論上ではなく現場ベースでオムニチャネルについて話せればいいと思います。
2013年末オムニチャネルが一躍話題の中心に
2013年12月、日本の流通業の2大巨頭であるセブン-イレブンとイオンが相次いで1000億円超のオムニチャネルへの投資を宣言しました。以来、長年専門家の間でだけ使われていた「オムニチャネル」という言葉は、広く小売業関係者の一般用語へとステップアップし、一躍スポットライトを浴びるようになったのです。
2014年に入って名刺が「オムニチャネルxxx部」(名刺のオムニ化と呼んでいます)に変わったという人と会う機会が急に増えました。ただそのような人からも、よく聞かれる質問ナンバーワンは依然として「オムニチャネルって何ですか?」だったりします。
本稿は連載の初回ということで、まずは「オムニチャネルとは?」という本領域における最も根本的な議論について、私なりの考えを述べていきたいと思います。
オムニチャネルという言葉のGoogle Trend図を日米比較。各国に於ける最大値を100とした表です。絶対値の比較ではない点ご留意ください。
オムニチャネルはバズワードか
本論に入る前に、少々寄り道をさせてください。
オムニチャネルの話をする際、よく「バズワードじゃないか」と言われます。つい先日まで「O2O」とか「ビッグデータ」、今は「オムニチャネル」。情報感度の高い方ほど「またコンサル・IT屋が商売ネタを作ろうとカタカナ用語を持ち出しているな」と感じていると思います。
私もここに対する確固たる答えは持っていません。数年後にはまた何か違う言葉が出ているのかもしれませんし、皆様の肩書もまた変更されているのかもしれません。
ただ、他の言葉と少し様相が異なるのは「オムニチャネル」という言葉が米国では既に5年以上関心を集め続けているという事実です。日本では「オムニチャネル」という言葉は最近出てきたように扱われていますが、米国では2009年以降注目を集め続けてきた言葉です。
また、第一人者である大手百貨店「Macy's」の大成功と2011年のオムニチャネルリテーラー宣言により、その勢いは加速し、今では業界を超えた主要課題として認識されています。この認識は日米にとどまらない世界中の動きであることがIBMのCxO studyから示唆されています(参考:「世界の経営トップがいま考えていること--オムニチャネルとプラットフォーム戦略)
補足ですが、日本で2012年末頃から騒がれている「O2O」は、実は本元である米国では日本ほど注目を浴びておらず、オムニチャネルがなお主流です。米国では2009年ごろに急上昇したオムニチャネルが継続して注目を浴び続けている。日本では2013年末から急激に伸びてきた。
このような状況を鑑みると、オムニチャネルという言葉は安易に 「バズワード」と決めつけない方がいいと考えています。