「IT部門は従来のサービスのビルダーから、ブローカーへと進化するべき」
ヴィエムウェアのCIMプロダクトマーケティング担当、桂島航氏はこう話す。クラウドの普及などにより、情報システム部門が把握しないまま、営業やマーケティング、製造など企業のさまざまな部門が自己判断でクラウド上のアプリケーションを契約してしまう――いわゆるシャドーITへの対策について、顧客からの問い合わせが増えているという。
今後は、IT部門が営業やマーケティング、生産などのユーザー部門に直接サービスを提供する割合が減るといわれる。一方で、クラウドの世界とユーザー部門の間に立ち、ビジネスに役立つクラウド上のアプリケーションの目利き役、それを安全に利用するための管理業務などを主な業務にする、ブローカーとしての役割が増えてくるとの指摘だ。
VMwareがスペインのバルセロナで開催した「VMworld Barcelona 2013」で発表した製品のアップグレードも、企業のIT活用におけるこうした事情を背景にしたものだったとのこと。IT管理を簡素化、自動化し、IT部門による複数のプラットフォームにまたがるサービス運営を支援するのがVMwareの役割だとしている。
より良いITサービスブローカーになるための軸として、桂島氏は3つ挙げた。「クラウドの自動化」、キャパシティやコンプライアンスの視点を含めた「運用」、ITコストの透明性向上などを含めた「クラウドビジネス」だ。
「IT Business Management Suite 1.0 Standard Edition」は、インフラ担当責任者が、仮想マシンの運用に掛かるコストと共有リソースの使用率を測定して計算する
クラウドの自動化では、「vCloud Automation Center 6.0」を提供する。vCloud Automation Centerは、サービスカタログからアプリケーションやインフラ管理など必要なサービスを選んで、サービス提供を自動化するためのツール。6.0の新機能として、ITサービスの承認や権限を統合管理するメカニズムを提供する「サービスカタログ」、サービスとしてのストレージなど任意のITサービスを数分で作成できる「任意のサービス作成(XaaS)」、vCloud Hybrid ServiceやRedHat OpenStackなど「マルチベンダー、マルチクラウドのサポート」が追加された。
2つ目のキーワード、クラウドの運用では「vCenter Operations Management Suite 5.8」に2つの新機能を追加した。1つは、MicrosoftのSQL ServerとExchange Server向けのダッシュボード。もう1つは、Hyper-VとAmazon Web Servicesのサポートだ。複数のクラウド、プラットフォームを統合管理できるようにした。
3つ目のクラウドビジネスでは、新たに「IT Business Management Suite 1.0 Standard Edition」を追加する。インフラ担当責任者が、仮想マシンの運用に掛かるコストと共有リソースの使用率を測定して計算する。「すべてのITコストを把握するための唯一の正しい情報源」になるとのこと。
利用企業は、プライベートクラウドにおいて、リソースの需要管理とコストの明確化を図り、IT部門のコストを5~15%削減できるとしている。
パブリッククラウドを交えたクラウドの企業への普及はまだ初期段階と言える。IT部門に求められる変化の範囲も不透明だが、確実に訪れている。対応するソフトウェアやハードウェアを提供する企業にも、利用企業側の視点を持つことがより強く求めらそうだ。