自作(DIY)コンピュータと言えば、おそらく多くの人が、超高性能のゲーム用コンピュータを組むことや、安価な部品を組み合わせて最低限の費用でPCを作ることをイメージするだろう。スーパーコンピュータを作ることなど、想像しないはずだ。しかし、考えてみるべきかもしれない。米ボイジー州立大学、電気・計算機工学科の博士課程の学生であるJoshua Kiepert氏は、「Raspberry Pi」(RPi)コンピュータを使って、2000ドル以下でミニスーパーコンピュータを作り出した。
RPiは、シングルボードのLinuxコンピュータだ。RPiはCPUに700MHzの「ARM11」プロセッサ、GPUに「VideoCore IV」を搭載している。Kiepert氏が使ったモデルBは、512 MバイトのRAMを持ち、2つのUSBポートと10/100 BaseTイーサネットポートが付いている。Kiepert氏はそのプロジェクトのために、このプロセッサを1GHzにオーバークロックした。
これがRaspberry Piをベースにした手作りのスーパーコンピュータだ。
Raspberry Piは単体でも興味深い存在だが、スーパーコンピュータの部品として見る人はほとんどいないだろう。しかし、Kiepert氏は問題を抱えていた。同氏は博士号取得のために、無線センサーネットワークのデータ共有について研究しており、そのネットワークのシミュレーションを、ボイジー州立大学にある、Linuxを使ったOnyx Beowulfクラスタスーパーコンピュータを使って行っていた。スーパーコンピュータとしては普通の性能を持つこのコンピュータには、現在32のノードがあり、それぞれが3.1 Ghzの「Intel Xeron E-3 1225」クアッドコアプロセッサと8GバイトのRAMを持っている。
Beowulfクラスタは、複数の安価な商用オフザシェルフ(COTS)コンピュータをネットワーク化してつなげ、その上でLinuxと並列処理ソフトウェアを動かすものだ。1994年に米国のゴダード宇宙飛行センターのDon Becker氏とThomas Sterling氏が手がけたこの設計は、スーパーコンピュータのアーキテクチャとして一般的なものの1つになっている。
では、利用できるBeowulfスタイルのスーパーコンピュータがあったにも関わらず、Kiepert氏が自分用のBeowulfコンピュータ作り始めたのはなぜだろうか?ホワイトペーパー「Creating Raspberry Pi-Based Beowulf Cluster」(Raspberry Piを使ったBeowulfクラスタの作成)で、同氏は次のように説明している。