Appleは「Apple Watch」を装着したまま就寝することを勧めている。
違和感を覚える人もいるかもしれないが、Apple Watchを装着したまま眠ることは、まもなくリリースされるApple Watch向けアプリ「バイタル」のメリットを活用する鍵となる。Appleのヘルス担当バイスプレジデントのSumbul Desai博士は米CNETとのインタビューで、そのように語った。
Appleはヘルスケアについて、常に真剣に取り組んできた。同社は、高い人気を誇るApple Watchを提供し、「ヘルスケア」アプリ(ユーザーのデバイスによって収集された大量の情報が保管されているデジタルフォルダー)を運営しているだけでなく、ヘルスケアの主要分野と、被験者の傾向に関する研究も長年にわたって実施している。
こうした取り組みの結晶がバイタルアプリだ。バイタルアプリは、ユーザーが休んでいる間、つまり健康指標を最も正確に測りやすいときに、Apple Watchによって収集された健康指標(睡眠情報、心拍数、皮膚温度、呼吸数、血中酸素濃度)を毎日確認できるアプリだ。
2つ以上の健康指標、つまり「バイタル」がユーザーの通常の範囲から少し外れている場合は、バイタルアプリが知らせてくれる。Desai博士によると、Appleはこの機能を構築するために、自社で行っている「Heart and Movement Study」(心臓と身体活動に関する独自の研究)から得られたデータと臨床専門家の意見を参考にして、背景情報がもっと必要かもしれない異常な数値についてのメッセージやアラートを作成したという。
Desai博士は米CNETに対し、「健康状態というのは、ほとんど目に見えない」と語った。「健康状態を毎日確認できるこの機能は、夜間の健康状態のスナップショットのようなものだ」
そのスナップショップを記録するため、そして、おそらくスマートリングのブームと、スマートウォッチよりもスマートリングを装着して眠る方が気にならないという点に対抗するため、Appleは睡眠時のパートナーとして選んでもらえるよう努力している。その理由を説明しよう。
Desai博士によると、バイタルアプリを最大限に活用するために、ほとんどのApple Watchユーザーが行わなければならない「最も大きな行動の変化」は、Apple Watchを装着したまま眠ることだという。夜間は、日中のストレスや活動、動きなど、心拍数や体温といった健康指標に影響を及ぼす可能性のある要因から安全に隔離されるため、その間に収集される健康情報は、ベースライン、つまり「基礎」状態をより完全に表すことができる、とDesai博士は言う。
「Apple Watchのデータを活用したければ、装着したまま寝なければならない」(Desai博士)
睡眠追跡デバイスとしてApple Watchを選択したユーザーの場合は、すでにApple Watchを装着したまま眠っているかもしれないが、Apple Watchのようなスマートウォッチは睡眠時に装着するデバイスとして、「Ouraリング」のような軽量なウェアラブルほど魅力的ではないと感じる人もいるかもしれない。Ouraリングはスマートリングブームをけん引してきた製品だ。このスマートリングブームは、先ごろ「Galaxy Ring」が発表されたことで拡大する一方である。
Ouraリングに詳しい人なら、Apple WatchのバイタルアプリがOuraの「コンディションスコア」に似ていることに気づくかもしれない。コンディションスコアは、ユーザーの健康情報をベースにヒントを提示して、その日の過ごし方を決められるようにする機能だ。別の人気の高い睡眠トラッカーであるFitbitにも同様の機能がある。Appleのバイタルアプリでは、具体的な値やスコアは表示されない。なぜなら、目的は「ベースラインとの比較」を示すことだからだ、とDesai博士は話す。「Appleの場合、比較対象はユーザー自身だ」
睡眠に焦点を絞り、睡眠中に収集された情報を大量に利用することで、バイタルアプリでは、Appleがこれまでずっと収集してきた情報をより包括的かつ迅速に確認することができる。Desai博士によると、バイタルアプリは、ユーザーが「トレーニングの負荷」を解釈するのにも役立つかもしれないという。トレーニングの負荷も、「watchOS 11」の発表の際に紹介された機能で、心拍数やペース、高度などのデータを使用して、ワークアウトの強度を評価するというものだ。
「今は、Apple Watchを装着したまま就寝するのに最高のタイミングだ」(Desai博士)
健康データで通常の範囲から外れている指標が2つ以上ある場合(つまり、そのユーザーの「普段」の状態と異なる場合)、そのことを知らせるメッセージと、考えられる原因の説明が表示される。
例えば、飲酒したときや、女性の場合、排卵後は、体温が上がることがある。また、カフェインの摂取量を減らしたり、薬を服用したりすると、睡眠時間や心拍数に影響が出ることもある。この他にも、体調を崩す、標高の高い場所に行く、といったよくある出来事も、Apple Watchが収集する繊細なデータに影響を及ぼす可能性がある。
つまり、すべての人の健康データと、このデータを生み出す個々の要因は状況に応じて考慮されるべきであり、バイタルアプリはユーザーを手当たり次第に医師の元へ送ろうとする機能ではない、とDesai博士は述べている。それぞれの通知は、AppleのHeart and Movement Studyで観察された情報に基づいている。この研究は、米国心臓協会とハーバード大学医学部のブリガム・アンド・ウィメンズ病院との提携の下で実施されており、「Research」アプリを通して自発的に研究に参加したユーザーから情報を収集している。Appleユーザーから得た被験者の情報は、臨床専門家の知識とともに、「健康指標が通常の範囲から外れるタイミングとその頻度」についてバイタルアプリに情報を提供するのに役立った、とDesai博士は話した。
同博士は、バイタルアプリで使用される文言について、「『病院に行った方がいい』とは言わない」と語った。「ユーザーがむやみに病院に行くことのないよう、われわれは細心の注意を払っている」
心臓血管の健康と活動について長年研究を行っているAppleだが、この他にも2つの研究を進めている。この2つは公衆衛生にもかかわるもので、Apple Watchが一部追跡可能な機能と重なっている。その2つとは、聴覚の健康(Apple Watchには、周囲の騒音が大きすぎる場合に通知してくれる機能がある)と、生殖の健康(Apple Watchは、月経周期の後半に体温がわずかに上がることを利用して、排卵をさかのぼって推測することができる)に関する研究だ。
ウェアラブルデバイスにとって、これは特に新しい概念というわけではないが、バイタルアプリは、個別の情報をより広範で定量化可能な健康状態から解釈することを目指すAppleの最新の取り組みである。
Desai博士は、バイタルアプリのメッセージシステムについて、「通知するタイミングとその方法をかなり慎重に検討した」と述べている。
「通知を出すときは、重要な理由があり、そして、ユーザーが行動を起こせるものにしたいと考えている」
Apple Watchこの記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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