大日本印刷株式会社(DNP)は1月22日、聴覚に障がいがある人もアート作品が楽しめるように、ガイドスタッフや体験会参加者の音声などをテキストにして、スマートグラスに字幕表示するシステムを開発した。
このシステムでは、テキストデータの内容に合わせて、最適なフォントを表示する「DNP感情表現フォントシステム」を活用している。同社によると、美術館や博物館では、アート作品や文化財などについて、年齢や障がいの有無、母国語の違いなどに関わらず、必要な情報がより多くの人に届き、意思疎通が可能となるユニバーサル・コミュニケーションの取り組みを進めているという。
そこで同社では、美術館・博物館などに向けて、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)やスマートグラスを使用したガイダンスシステムや、新しい鑑賞システムなどを開発・提供している。そうした取り組みの中で、MR(Mixed Reality:複合現実)や文字フォントなどの技術・ノウハウなどを掛け合わせ、スマートグラスに音声を字幕で表示するシステムについて、開発パートナーであるアイシンの協力のもとで開発した。
同システムは、東京都の「西新宿先端サービス実装・産官学コンソーシアム」における「先端サービス実装分科会プロジェクト」として採択を受けている。このシステムにより、リアルタイムで音声を認識し、スマートグラスに字幕を表示することが可能。また、スマートグラスに接続した指向性マイクを、解説者などに向けることで、聞きたい方向の音声を拾って字幕に表示することができるという。さらに、テキストデータの内容を自動解析。表現された感情や話題に合わせて、自動的にフォントを切り替える「DNP感情表現フォントシステム」を活用する。
音声をテキストにした際に、単語が持つ感情やイメージに合わせて、最適なフォントや色を自動的に選択して表示する。例えば、楽しそうな表現・単語はポップなフォントや明るい色で、悲しそうな表現・単語は繊細な印象のあるフォントや寂しい色で、作品名などは太めのフォントや赤色で表示できるという。同社では、フォントや色が変化することで、感情やイメージを読み取りやすくなるだけでなく、テキスト内の重要な部分に目が行き、理解しやすくなるとしている。
同社では、1月27日、28日、2月3日、4日の計4日間(午前の部10時30分〜12時00分、午後の部13時30分〜15時00分)、東京都庁内にあるパブリックアートを対象に、同システムを活用した鑑賞体験会を実施する。各回10名まで。申し込み多数の場合は抽選。体験会において、同システムの効果や課題を検証。今後は、スマートグラスを利用したMR体験について、機能や用途の開発等を継続するとともに、ユニバーサル・コミュニケーションの一助となる製品・サービスを美術館・博物館や企業・自治体などへの展開を目指す。
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