パナソニックは3月30日、充電池「エネループ」を約10年ぶりに大幅刷新したと発表した。繰り返し使用回数や自己放電能力はそのままに高容量化し、1回あたりの使用時間を延長。あわせて「エボルタ」ブランドで展開していた充電池をエネループブランドへと一本化する。
高容量化したのは、スタンダードモデルのエネループとお手軽モデルの「エネループ ライト」。エネループは1900mAhから2000mAh、エネループ ライトは1000mAhから1050mAh(いずれも単3形)へ増量したほか、エネループ ライトは繰り返し使用回数を1200回から1500回へと引き上げた。
高容量化は、新しい正極を開発し、正極で電解液が取り込まれる現象を減らし、実現したもの。繰り返し使用することで電解液が分解し、ガスが発生する。ある程度ガスが貯まると電池の外に逃がしていたが、負極材料を適正化しガスの吸収性を向上。繰り返し回数が減らない工夫をしているという。
合同取材においてパナソニック エナジー エナジーデバイス事業部コンシューマーエナジービジネスユニットマーケティング部二次電池商品企画課主幹の黒田靖氏は「高容量にするだけであれば、それほど難しくはない。難しいのは繰り返し使用回数や自己放電能力を落とさずに高容量化すること。加えて、エネループでは10年後の残存容量を70%キープするが、このときにいかに電圧を落とさないかも大事。電圧が落ちると懐中電灯をつけても暗かったり、使用機器の動きが鈍くなったりしてしまう。高容量と使い勝手を両立するために画期的な技術革新があったわけではなく、今まで培ってきた技術を積み上げ、最適化することで実現できた」と努力を重ねる。
エネループは、2005年に三洋電機が発売した充電池。エネループに加え、2010年にはエネループ ライト、2011年には2500mAh(単3形)のハイエンドモデル「エネループ プロ」とラインアップを増やしてきた。三洋電機がパナソニックの完全子会社となった2011年からは、パナソニックブランドの充電池として展開。パナソニックでは、乾電池と同ブランドの「充電式エボルタ」シリーズを展開しており、充電池で2つのブランドを持っていたが、今回の新製品発売を機にパナソニックの充電池は、エネループへと名称を統一する。
「エボルタは乾電池ではハイエンドモデル、充電池においては手頃なモデルとして使われていて、整合性がとれないと見る向きもあった。乾電池はエボルタ、充電池はエネループと名称を分けることで、選びやすくした」(黒田氏)とエネループへと一本化した理由を話す。
また、充電池の市場については「10年以上前は、デジタルカメラやゲーム機の電源として使われてきたが、最近ではリモコンなど、使用機器が乾電池と変わらない。その中でも充電池を選ぶ理由は、環境に良いなどユーザーの価値観やライフスタイルに寄った部分」(黒田氏)と現状を説明する。
新エネループシリーズでは、繰り返し使える、長持ちするなどのコンセプトはそのままに、充電池のパッケージを従来の樹脂から「エシカル(紙)パッケージ」へと変更。包装材使用量を約45〜70%まで減らし、環境に配慮する。
今回の開発は2019年頃に要素技術を確立し、約3年かけて実現したもの。黒田氏は三洋電機時代からエネループを手掛けており、商品デザインも当時と同じデザイナーが担当しているとのこと。
同じく三洋電機時代からエネループに携わる、パナソニック エナジーエナジーデバイス事業部コンシューマーエナジービジネスユニットマーケティング部二次電池商品企画課課長の新沢輝昭氏は「パナソニックでは、小学生に向け電池教室などを実施しているが、電池に乾電池と充電池があるのを知らないと答えるお子さんや親御さんは意外と多い。広く伝えてきたつもりだが、伝えきれていなかったことに反省している。今後も継続的にしっかりと伝えることで、お客様に選んでもらえるようにしていきたい」と今後について話した。
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