前回は、Apple Watchについて、1と2の違いやアップルがApple Watch Series 2で“アルミモデル推し”に転じた理由などを説明した。
ハードウェアとしての訴求を抑え、ソフトに振ろうとするApple。簡単にいうと、高級時計路線から、より広い層への訴求になるだろう。にもかわらず、ハードウェアとしてのApple Watchは相変わらずずば抜けた完成度を誇るし、プロダクト全体を見渡した場合、さらに成熟した印象を受ける。それを端的に示すのがストラップだ。
ここ数年、エントリークラスの時計(1万~5万円)は、時計よりもストラップを売るビジネスを指向しつつある。好例はダニエル・ウェリントンであり、日本のKnot(ノット)だろう。本体の価格を抑え、さまざまなバリエーションのストラップを選ばせる。
自分の個性を示すのはストラップになるから、本体のデザインはむしろシンプルなほうが望ましい。こういうトレンドに、スマートウォッチの分野で唯一追随しているのが、Apple Watchである。スマートウォッチに注力するフォッシルも、スマートウォッチに交換用のストラップをそろえたが、88種類(!)※もあるApple Watchにはとても及ばない。使い勝手に対する配慮も同様だ。
2015年に発表されたApple Watchが時計関係者から高い評価を得た一因は、優れた装着感にある。時計自体の重心はやや高めだし、腕に当たる裏ぶたの接触面積も大きくはなかったが、微調整可能で、適度な柔軟性を持つストラップは、その弱点を補うには十分だった。またデスクワークの邪魔にならないよう、どのバックルも突起を抑えてあった。
某時計メーカーのデザイナーが「この時計は、毎日時計を付けている人がデザインしたのだろう」と評したはずである。個人的に秀逸だと思ったのが、フルオロエラストマー製のスポーツバンドである。これはピンで留めるだけの簡易な構造を持つが、きちんと留めれば外れにくい上、ピンの突起を抑えた結果、デスクワークを妨げない。しかもベルトの内側は大きくえぐられており、装着した際にベルト自体の張り出しを抑えるようになっている。
完成度の高さで言うと、ウーブンナイロンと革ベルト付きのクラシックバックルだろうか。共通するのは、実用性への配慮と質の高さである。両者のバックルはベルトに直づけされているため、左右の遊びが出にくく、またバックルの張り出しも抑えられる。クオリティーも価格を考えると際だって良い。ウーブンナイロンのようなストラップはすでにあるが、それらは、1枚の大きなシートをカットし、そのコバを溶かしてベルト状に整形したものだ。コバは溶かして整えただけなので、長期の使用ではほつれる可能性がある。
対してAppleは、編み込みで長いストラップを作り、その上下をカットしてストラップとしている。その証拠に、ストラップの左右にはちゃんと編み目がある。コストはかかるがほつれる可能性は少ないし、溶かして固めたコバが肌を傷めることもない。カットしたストラップの端末はコバ処理されているが、子細に見るとベルトを溶かしたのではなく、わざわざ透明の樹脂で固めてある。
ほつれないための配慮たるや、おそるべしではないか。ただ装着感には不満がある。ストラップの編み込みを硬くしたのは長期間使うための配慮だろうが、きっちり編んだ結果、左右の遊びは少なくなった。もう少し曲がりを与えたほうが、腕に巻いた感触は改善されるだろう。
※38mm/42mmにおける同じカラバリを含むラインアップの合計(2016年12月現在)
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