日本企業による中国向けの越境ECをワンストップで支援するプラットフォーム「ワンドウプラットフォーム」を運営するInagora(インアゴーラ)は11月29日、約23億円の資金を調達したことを発表した。調達先は、WiL、中国投資会社Ventech China、TO-WIN Invest Limited、個人投資家など。同社は2月、5月にも12億円ずつ調達しており、サービスローンチから1年間での累計調達額は約47億円におよぶ。
今回資金した調達は、中国現地でのマーケティングの強化に加えて、日本企業向けECコンサルティングメンバーの人員増強や、商品の魅力を伝えるコンテンツ制作部隊・設備の増強に充てるとしている。また、後述する新戦略「越境EC2.0戦略」における、ネットワーク構築のための事業開発部隊の増強に投資していくという。
ワンドウプラットフォームは、セキュリティソフト企業であるキングソフトを創業した翁永飆氏が2015年8月に立ち上げた、中国消費者向けの日本商品特化型ショッピングアプリ。現在、東急ハンズやDHC、ライオン、伊藤園など100社・1500ブランドの1万商品を取り扱っており、月次流通総額はこの1年で10倍の数億円規模に成長しているという。ユーザー向けの越境ECアプリは100万ダウンロードを超えるとのこと。
同プラットフォームの特徴は、企業やブランド、商品などの動画や記事コンテンツを独自制作し、中国の消費者にブランドや商品の“魅力”を伝えた上で購入を促していること。たとえば、中国では白米をそのまま食べる文化がないため、お茶漬けなど日本流の白米を美味しく食べられる方法を特集で紹介している。アプリ内にはSNS機能も搭載されており、ユーザーは商品の口コミなどを投稿できる。
ワンドウプラットフォームでは、初期費用と固定費が無料。また、ブランドページの制作から価格設定の立案、マーケティング提案まで、すべての費用を同社が負担するという。「(出店企業の)売り上げが立たないと弊社には何も収益がない。企業さまと運命共同体のような形で事業を進めている」(翁氏)。
続いて、翁氏は新戦略「越境EC2.0戦略」を紹介した。同氏によれば、中国において消費者の購買行動に変化が起きており、さまざまな販売チャネルが生まれているという。
たとえば、チャットアプリ「Wechat」で数千万人にフォローされ、主要メディアに匹敵する影響力を持つユーザーアカウントや、生放送アプリなどで人気を集めるユーザーが、その知名度を生かしてEC事業に参入しているそうだ。あるユーザーがタオバオで2時間中継したところ、約41万人が視聴し、3億2000万円の売り上げを記録した事例もあるという。
そこで新たに打ち出した越境EC2.0戦略では、従来の大手ECモールに加えて、Wechatの公式アカウントや、中国最大のSNS「Weibo」のインフルエンサーであるKOL(Key Opinion Leader)などを活用して、日本の商品をより多くの消費者に販売するという。ECの運用管理ツール「ネクストエンジン」とも連携しており、海外向けの在庫も一括管理できるようにするとのこと。
これにより、中国の販売者も日本の商品購入ルートやノウハウがなくても、仕入れ資金なしに安定的に商品を確保できるようになるほか、ワンドウプラットフォームがメーカーや正規代理店と契約した“本物”の商品のみを取り扱えるようになる。さらに、注文された商品はワンドウが直接中国のユーザーに発送するため、物流システムの構築も不要としている。
同日には、ワンドウプラットフォームの新たなパートナーとして、アリババグループの「タオバオグローバル」と提携したことを発表した。12月中旬に双方のシステムを連携し、日本商品のブランドを管理することで、日本企業はタオバオの約10万の個人ショップ経由で約4億人の中国消費者に商品を販売できるようになるとしている。
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