米HubSpot主催の年次カンファレンス「INBOUND 2016」が米国時間11月8~11日にかけてボストンで開催されている。2日目の9日には、同社の共同創業者であるBrian Halligan氏(CEO)とDharmesh Shah氏(CTO)が基調講演に登壇した。
Halligan氏はまず、HubSpotの創業から10年で顧客の購買行動がどのように変化したかを語った。Amazonなどのサービスの登場、検索エンジン最適化(SEO)の変化、ソーシャルメディアの普及を背景に、企業は製品の差別化や競争優位のためにより一層の努力が必要とされている。
従来は店舗内の陳列棚で数インチのスペースを確保するために競い合っていたが、今ではインターネットという無限のスペースの中でますます競争が激しくなっている。また、企業や消費者に関係なく、ソーシャルメディアの利用が当たり前になっている。企業は、ターゲットオーディエンスに対して最もメッセージを届けやすい顧客接点でマーケティングを展開すべきだと強調した。
検索の仕組みも大きく変わった。モバイル機器に質問を入力するか、Siriなどの音声認識機能を使えば、1回の検索で適切な答えが得られるようになった。メールはSlackをはじめとするコミュニケーションツールが取って代わり、購買決定の要因として口コミがもっとも大きい影響力を持つようになった。
基調講演の後半では、Shah氏が登壇し、マーケティング技術が今後5年でどこへ向かうのかを予測した。
今日の検索サービスは、Googleだけでなく、より一層の広がりを見せている。例えば、友達を探すにはFacebookにアクセスし、商品を探すにはAmazonにアクセスする。こうした新たな環境の中でSEO対策を成功させるには、“Human Enjoyment Optimization(HEO)”にフォーカスすることが重要になる。つまり、これからのマーケティング戦略では「人に最も多くの楽しみをもたらすのは何か」を見極めるべきだと説明する。
また、モバイルの台頭とともに、世の中にはアプリが無数にあふれている。だが、実際に多くの人に使われているのはメッセージングアプリなどの一握りだけだ。「とても魅力的で人生を変えるほどの価値を提供できない限り、モバイルアプリに力を入れても報われない」(Shah氏)
その一方で、メッセージングアプリをうまく活用することで信頼やより強固なコネクションを構築することができる。そこで大きな注目を集めているのが、「チャットボット」である。
Shah氏は講演の中で、マーケティングとセールス向けのボットである「GrowthBot」を披露した。HubSpotやGoogle Analyticsなどのマーケティングシステムと接続し、さまざまなデータやサービスに素早くアクセスできる。現在は、SlackとFacebook Messengerで利用できるようになっている。
チャットボットの利用範囲はとても広く、レポートの作成やソーシャルでの広告キャンペーンの立ち上げ、ブログ投稿の作成といった業務を進めるための強力なアシスタントになると強調した。
人工知能(AI)、特に機械学習によって、コンピュータは見込み客とセールスを結びつけるためのよりよい仲介者になる。チャットボットや機械学習の仕組みを取り入れることで、自律したセルフサービスのマーケティングオートメーション(MA)が実現するという。
「これまでは何をしたいかをソフトウェアに伝えていた。AI技術が進化するにつれて、こうした仕組みは変わろうとしている。やがて、ソフトウェアは私たちがしてほしいと思ったことを学習できるようになり、企業と顧客の接し方や関わり方が大きく変化するだろう」(Shah氏)
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