ドルビージャパンは、映像に記録できる輝度のレンジを拡大し、より明るい高画質を得られるという高画質HDR(High Dynamic Range)技術である「ドルビービジョン」の説明会「Dolby Vision Day 2016」を開催した。
ドルビービジョンでの制作から配信、再生までの環境が整ったことを受け、パートナー企業によるデモンストレーションを実施したほか、ドルビービジョンの説明や、動画配信、製品における採用事例などを紹介した。
ドルビービジョンは、映画、テレビなどの音響技術を数多く手掛けるドルビーラボラトリーズが開発した高画質技術。ただ単に映像を明るくしただけではなく、ビビッドな明るさを残し、ディテールまで表現できることが特徴だ。すでに米国で、VIZIOやSkyworthブランドが対応テレビを販売しているほか、2016年春には日本でもLGエレクトロニクス・ジャパンから対応する有機ELテレビ「E6P/C6P/B6P」シリーズが登場した。
LGエレクトロニクス・ジャパンの代表取締役社長である李仁奎(イ・インギュ)氏は「有機ELテレビの特徴はなんといっても自発光素子だけが表現できる色彩の豊かさ。特に漆黒の表現にある。この特徴がドルビービジョンによってさらに強調され、圧倒的な映像表現を可能にしている。有機ELテレビはドルビービジョンと非常に相性が良い」とコメントした。
「日本の高画質化は解像度に特化してきたが、輝きの度合い、コントラスト、幅広い色彩なども不可欠な要素」とドルビージャパン代表取締役社長である大沢幸弘氏は分析する。ドルビービジョンは、自然に近い、色と輝度を表現する技術。「いよいよHDRの波が押し寄せてきた。解像度は従来技術の延長だが、HDRは画期的な技術の登場。以前と以降では映像が大きく変わってしまった」と、一段と進んだ高画質技術に自信を見せる。
5月末には映像配信サービス「Netflix」がドルビービジョンに対応した作品の配信がスタートしたほか、「Amazonプライムビデオ」が日本でのサービス開始を表明。「ひかりTV 4K」でもドルビービジョン対応作品を8月下旬から提供開始するなど、コンテンツもそろいつつある。会場内でデモ映像を流したNTTぷららの取締役技術本部長である永田勝美氏は、「ドルビービジョンのデモ映像で見ていただきたいのは、金属の光沢感やきらめき。ナイター照明の中でも立体的な表現ができているところ」と、ドルビービジョンの映像を表現した。
「ドルビービジョン その実力と期待」をテーマに開催されたゼネラルセッションでスピーカーとして登場したAV評論家の麻倉怜士氏は、ドルビービジョンの重要ポイントとして、白ピーク輝度が1万nit、PQ(Perceptual Quantizer)カーブ、ディレクターズ・インテンションの3つを挙げ、ドルビーが数百人を対象に実施した、テストの内容を披露。これは、画像を見て本物らしく感じる白、黒の輝度を探るというもので、このテスト結果から、白1万nit、黒0.005nitという数値が決められたという。
PQカーブに関しては、「10bitガンマでは不足、15bitガンマでは非効率。1万nitでは12bitPQが最高効率。ドルビービジョンがすごいと言えるのは、PQカーブと1万nitの発見があったから」と評した。
音響システムのイメージが強いドルビーだが、ドルビービジョンの登場で、映像システムとしてのブランドイメージも構築しつつある。そのドルビーが次に手掛けるのは、ドルビービジョンと音響技術「ドルビーアトモス」を組み合わせた映画館「ドルビーシアター」だ。すでに米国、欧州、中国などでオープンしており、ドルビーラボラトリーズのコンシューマーイメージング担当バイスプレジデントのローランド・ヴライク氏は「ドルビーシネマのコンセプトは、ほかにはないユニークなもの。音響、映像だけでなく、座席や照明の設計に至るまで、今までの映画館とは違った体験ができる」と表現する。
日本での導入は未定だが、ドルビーアトモス対応劇場が普及し始めている状況もあり「ドルビーシネマの候補地は日本にもたくさんある」とコメントした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力