高校1年女子B美は、成績が下がって保護者に理由を尋ねられたところ、次のように答えた。「毎日LINEとTwitterに時間がかかりすぎて勉強をする時間がない。睡眠時間はこれ以上削れないし、仕方がない」。
B美のグループでは、LINEグループとTwitterでお互いにつながりあい、日頃からコミュニケーションしあっている。グループメンバーのLINEやTwitterを見ていないと、学校での話に加われないというのだ。B美のグループの中心人物であるC子はSNS好きで、みんなが自分の投稿を見ていることを前提に話を進める。読んでいないと腹を立て、グループの1人を追い出したこともあるという。「グループから追い出されたらボッチになるし、友だち関係を続けるためにはLINEとTwitterが必要」。
大人世代でも、「SNSの友だちが多すぎると、すべての投稿を読めないから人数を制限している」という人がいる。mixi時代、オフ会で出会った人と親しくなるために、mixiでつながるという人は多かった。そのころ出会ったある女性の話だ。彼女は、「友だちの投稿はすべて読みたいから、20人に制限しているの」と、新しくつながることを拒んでいた。読んだら必ずコメントなどを返すことにしており、対応できる限界以上はつながらないというわけだ。
オフ会の初回に会ったというだけで友だちになり、2回目以降に出会った人とは友だちにならないことの不思議さ、投稿はすべて読んで返事しなければならないという堅苦しさに驚いたものだ。
大人世代でも、「Twitterのフォローはツイートがすべて読める人数に限定している」という人を知っている。その人は、新しく誰かをフォローする度に、すでにフォローしていた誰かをアンフォローする。Facebookでも同様だ。「友だちの投稿はすべて、さかのぼって読むから忙しい。人数が増えすぎて休日がつぶれてしまい、仕事のようだ」と言っている人を知っている。
しかし、SNSは義務ではない。メッセージなどの個別の連絡は見るべきだが、それ以外の投稿はすべて見る必要はなく、自分のログインしたタイミングで見た投稿にできる範囲で反応すればいい。閲覧や反応を義務化すると、SNSが仕事化して楽しくなくなってしまうからだ。SNSですべて読まなくてもリアルに会話すればいいだろう。
「最近、友だちとの会話が減っている」とある高校生が言っていた。それまでは会話していたはずのことを、すべてLINEやTwitterで済ませているためだ。しかし、LINEやTwitterでは感情も単純化され、おもしろさやウケを狙った内容ばかりになってしまいがちだ。
IT業界の人たちに話を聞くと、誰もが顔を合わせることの重要性を力説する。ネットを使ったコミュニケーションは便利だが、やはり直接顔を合わせるコミュニケーションにはかなわないのだ。直接話すことでやりとりされる情報量はネットを使った比ではない。
10代は、リアルコミュニケーションを実地で学ぶべき時だ。SNSやネット以外でのリアルのコミュニケーションをたくさん経験し、失敗もしながら、人間関係の築き方を学んでいってもらいたいと思う。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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