アプリケーションはこれまでも、ある意味において最も重要な要素であった。1980年代のPC戦争においても、勝者を決めたもの、すなわちIBMに力を貸し、Appleとの戦いでMicrosoftが勝利する原動力となったものはアプリケーションであった。
ただ、今日のアプリケーションを取り巻く環境は、当時のものとは異なっている。状況は目まぐるしく変化しているのだ。そして、よりインクリメンタルなものともなっている。また、マルチプラットフォーム化も進んでおり、デバイスの垣根すら越えるようになってきている。その結果、IT分野における力点は、アプリケーションの配備やサポートを行う人員から、開発を行う人員へと移っていくことになるはずだ。また、IT分野への参入が容易になることで、競争も激化していくということが言えるだろう。
こういった新たなアプリケーションモデルはスマートフォンに端を発している。具体的には、AppleのApp Storeが同社のモバイルOS向けアプリケーションを扱ったことから始まっているわけだが、こういった流れはAndroidをはじめとする他のモバイルプラットフォームにも広がり、最近ではネットブックやタブレットにも広がってきている。このため、同種の流れがデスクトップアプリケーションやウェブアプリケーション、エンタープライズアプリケーションに広がっていくのも時間の問題だろう。なお、こういったものはそれぞれ専用のアプリケーションストアで提供されるようになるはずだ。
大規模なソフトウェアパッケージが、このようなモデルにどのように適応していくのかについては、特に目が離せないだろう。こういった過程においてモジュール化と、おそらくはオープン標準の採用が促進され、最適なかたちで組み合わされたアプリケーション/モジュール間でデータがよりスムーズに流れるようになっていくはずだ。このような流れが、どういったかたちで展開していくにせよ、このアプリケーションモデルの勢いは非常に力強いものであるため、従来のソフトウェアパッケージやソフトウェアの開発方法にも何らかのかたちで影響が及ぼされることは間違いない。
これは単純な話だ。ITサポートが少なくなれば、ちゃんと動作するアプリケーションというものに力点が置かれるようになる。また、新たなアプリケーションモデルにおいて、開発者はユーザーにすぐさま価値をもたらすアプリケーションの開発を求められるようになる。さもなければ、次の仕事がまわってこなくなるからだ。
こういったことにより、優秀な開発者しか生き残れないという環境が醸成される。ただ、これは開発者にとってかつてないほど好ましい時代が来るということも意味している。
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