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SIMロック解除、「基本的に意味がない」--KDDIが主張

永井美智子(編集部)2010年03月31日 20時33分

 「単純にSIMロックを解除すればユーザーにメリットが生まれるということではない」――。KDDIは、4月2日に開催される総務省のSIMロックに関する公開ヒアリングに先立ち、3月31日に記者会見を開催。SIMロックの現状について報道陣に説明するとともに、SIMロックの解除を求める声に反論した。

 SIMロックとは、携帯電話で特定の事業者などのSIMカードしか対応しないように制限するもの。NTTドコモとソフトバンクモバイルの場合、自社SIMカードのみを受け付ける仕組みを設けている。KDDIの場合、セキュリティ上の理由からその端末に最初に挿入されたSIM以外は受け付けない仕様になっており、ユーザー間で端末を貸し借りするといったこともできないようにしている。ただしauショップでロックを解除することはできる。

 KDDIはSIMロック解除が大きな意味を持たない理由として、大きく3点を挙げる。

 1つは通信事業者によって、利用している通信方式が異なることだ。NTTドコモ、ソフトバンク、イー・モバイルはW-CDMAと呼ばれる方式を利用しているのに対し、auが採用しているのはCDMA2000。W-CDMAとCDMA2000にSIMカードの互換性はなく、両方式に対応している端末も現時点では存在していない。このため、たとえSIMロックを外したとしても、auユーザーが持っているSIMをNTTドコモの端末に挿せば通話ができる、といったことにはならないというのだ。

 2つめは各社が利用している周波数の違いだ。既存の端末は、各通信事業者の利用している周波数にしか対応していない。どのキャリアの周波数にも対応する端末でなければ、SIMカードを差し替えても使えない。

 3つめは各社のサービスの技術仕様が異なることだ。音声、SMS(ショートメッセージ)、テレビ電話の仕様については3GPP標準で仕様が決められているため、SIMロックが解除されればさまざまな端末で利用可能だ。しかしEメールやインターネットアクセス、アプリなどは企業により仕様が異なり、互換性がない。

 これらのことから、現状でSIMロックの解除は「基本的に意味がない」(KDDI渉外・広報本部 渉外部 部長の古賀靖広氏)というのが同社の主張だ。

  • 日本における各通信事業者のSIMカードの状況

  • 各社のLTE展開計画

 次世代高速通信技術「LTE」の時代においても、根本的な問題は同じだと古賀氏は言う。各社は2010年度以降、順次LTEを採用する計画だ。しかしその開始時期にはばらつきがあり、利用する周波数帯も違う。また、データ通信にLTEを利用しても、音声通話には第3世代携帯電話(3G)ネットワークを使う方法が検討されている。

 各社の通信方式や周波数に対応した端末が登場しない限り、SIMロックを解除しても異なる通信事業者間で同じ端末が使えるわけではなく、たとえ同じ端末が使えても限られたサービスしか利用できないようでは、ユーザーへのメリットは薄い。しかも、さまざまな仕様に対応しなくてはならない分、端末の開発コストは上がり、それは結果的に価格上昇につながってしまう――。これがKDDIの言い分だ。

 「SIMロック解除は端末の問題と理解している。各社の利用する周波数帯やサービス仕様が異なる中で、すべてに対応する端末が出てくればロックを解除する意味がある。ただ、そこは市場競争にゆだねるべきだ」(古賀氏)

欧米もSIMロックは一般的

 欧米の状況を見ても、SIMロックは一般的な手法だと古賀氏は言う。もともとSIMフリーという概念は、通話中心の第2世代携帯電話(2G)が一般的だった時代、国境間の移動が多い欧州で、国が違っても同じ端末を使いたいという発想から生まれたもの。メールやインターネット接続に対応した第2.5世代携帯電話(2.5G)以降は、端末の販売奨励金を月々の通信料金で回収する手段として、一定期間SIMロックをかけることが一般的になったと言うのだ。

 例えばドイツのT-Mobileでは、新しく発売されたポストペイド端末ではSIMロックをかけ、2年後に無料でSIMロックを解除するという手法を採用している。2年以内にSIMロックを外したい場合は99.50ユーロがかかるという。

 英国では事業者にSIMロック解除を強制するガイドラインが定められていたが、2002年に廃止され、現在は事業者の判断にゆだねられているとのこと。米国でもSIMロック解除を義務化する規制はないとした。

  • 英国、イタリアにおけるSIMロックの状況

  • ドイツ、フランスにおけるSIMロックの状況

  • 米国、韓国におけるSIMロックの状況

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