広告主およびメディアの代弁者たる広告代理店は、常に表題であるクライアントファーストおよびメディアファーストの微妙な関係を深く理解し、その間で成長できてきたと感じます。ここで私の言葉で両者を確認させて下さい。
しかし昨今、「これは本当に広告主の要望なのだろうか?」というメッセージが、多くなったと感じます。
先日、YouTube上で「Actimel」というカルシウム飲料の映像広告を見ました。内容をここでご紹介致します。オフィスにおいてデスクで業務をしていた男が、プリンタに印刷指示を出しています。数度チャレンジしても、自分の目的の印刷物は出てきません。挙句の果てには、自分勝手なプリンタよりトナーを浴びせられる始末、怒った男は、自分のパソコンをコピーのところに持って行き、パソコンの画面を強引にコピーの画面に合わせ、コピー機の印刷ボタンを押すことにより印刷を試みようとします。
このシーンはパソコンが壊れるくらい叩きつけるので、ある意味暴力的でありますが、映像はここで終了します。最後に「イライラ解消に」=「Actimel」というテロップが出てき、視聴者は「ホッ」として(心なごんで)映像が終了します。
見方によれば、破壊的および暴力的なため、既存パソコン業者、プリンタ業者からクレームがでてもおかしくない内容です(笑)。
最近のネット上の流行映像には共通性を感じるのです。それは「最後まで何の目的なのか?何をメッセージとしているのか?わからないエンターテインメント性」です。
アサツー・ディ・ケイの佐藤達郎氏は次のようなことを言っています。「一言でいうと従来のものとは似ても似つかわない『広告らしくない広告』が多くなっている。それらの広告の意味するものは、『消費者間の会話をファシリテートする広告』、『送り手の意図が見え過ぎると逆に消費者をシラけさせるので、適度にブランドと消費者が一緒に遊び、楽しみ、何かを共有する感覚や状態』なのかもしれない」、と。
また佐藤氏は、クリエイティブ的視点では「これから重視するべきなのは、従来型の広告クリエイティブでなく、『ブランデット・コンテンツ』、つまり『ブランドのメッセージを、ドライブする』コンテンツなのであります。わかり易く言うと『ブランドのメッセージと意図的に関係性を持たせた』(消費者志向の)コンテンツなのである」と言っています。
いままでのことからすると、クライアントファーストまたはメディアファーストな従来型志向も重要であると思いますが、それよりも今後はエンドユーザーファーストの企業姿勢が強く求められてくると思うのです。消費者の代弁者たる広告代理店、それを実現できている会社はまだ少ないのかもしれません。昨今のCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)の隆盛とともに、真のエンドユーザー志向が求められているのであります。
大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。
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