ソニーは7日、世界で約4000社に上るすべての調達取引先企業に対し、今夏をめどに長時間労働や未成年者の就労など人権・労働条件などの不備がないかをチェックするCSR(企業の社会的責任)監査を事実上、義務付けることを明らかにした。主なチェック項目をまとめた手引書を配布し取引先企業に自己監査を求めるほか、専門の第三者機関による監査も行う。監査は米IBMやヒューレット・パッカード、蘭フィリップスなど欧米の有力エレクトロニクス企業との国際コンソーシアム(共同体)で策定・標準化した仕組みに基づくもので、これを調達制度に全面適用する日本企業はソニーが初めて。
今後は、欧米消費者の注目度が高い国際企業のトヨタ自動車やキヤノンなど他の国内有力企業でも同様の取り組みを求められる可能性は高く、ソニーの取り組みが注目される。
人権意識の高い欧米市場では、取引先であっても劣悪な労働環境や人権侵害などの社会的な問題を放置する企業は消費者の不買運動の対象となったり、投資家から投資不適格と判断されるケースがあり、CSRの観点に立った調達管理は、国際企業に共通した経営の重要課題になり始めているという。
ソニーは連結売上高の約7割を海外事業で計上、欧米の市場評価が業績や企業ブランドに大きな影響を与えることから、他の欧米有力企業と協力し世界的にも先進的な国際調達のCSR監査に踏み切る。国内では6日から取引先への説明会を開始しており、6月末には監査情報を管理する専用データベースの運用も始める。
監査は、あくまでソニー側からの要請による取引先企業自身の自己監査を基本とし、相手先に課題が見つかっても直ちに契約を変更することはない。ただ、改善を求めても履行されない場合や重大な人権侵害などが判明した場合は、契約解除を含め厳しく取引を見直す。
一方、第三者機関による監査は、国際コンソーシアムの「EICC」主導による参加企業の共同監査として実施する。同コンソーシアムは監査委託機関の候補を10社程度選定済みで、一部の受託生産会社などに試験的な監査に入った。正式に監査機関を決定し、今年後半には本格的な活動を開始する方向だ。
同コンソーシアムは、主要エレクトロニクス企業の個別CSR活動による監査の重複、監査範囲の違いによる部材供給メーカーの混乱や業務負担を避ける目的で2005年3月に発足。ソニーが適用する監査基準を満たせば、供給メーカーは同コンソーシアムに参加する約25社の欧米主要企業から同様の評価を得られるメリットがある。同コンソーシアムの活動には、すでに米自動車大手のビッグスリーなども関心を示しており、業界の枠を超えた取り組みに発展する可能性がある。
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【用語解説】CSR
「Corporate Social Responsibility」の略で、企業の社会的責任のこと。環境保護活動や身体障害者の雇用、文化・芸術支援など幅広い意味で使われる。最近は食品の衛生管理といった法令順守なども含まれ、企業のイメージをも左右する重要な要素となっている。
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