3月に入って日経平均株価が再び1万6000円台を割り込むなど、株式相場は軟調な展開が続いている。こうした株価の停滞について市場では「日銀による量的金融緩和の早期解除急接近観測による金利先高感に警戒感が高まっている」との受け止め方が一般的だ。しかし、量的金融緩和はすでに何カ月も前から株式市場では織り込み済みの材料であり、量的金融緩和が解除されたからといってただちに「ゼロ金利解除にはつながらない」というのがコンセンサスになりつつある。
市場の一部で停滞相場の本当の理由として取りざたされはじめたのが「ここにきての大型ファイナンスに伴う資金吸い上げにより、需給が崩れるとの懸念が台頭しているため」というものだ。主なものだけでも三井物産2000億円、全日空1000億円、積水ハウス700億円、西日本シティ銀行600億円、T&Dホールディングス320億円、宇部興産200億円などとなっている。そして、このファイナンスラッシュの印象を決定づけたのが、楽天が3月1日に発表した115万株(約1080億円)の公募増資と、代表取締役社長 三木谷浩氏夫妻の保有株20万株の株式売り出しだ。
楽天が1000億円を超える大型ファイナンンスに踏み切るのは、2005年末時点で約1500億円(金融部門を除く)に膨らんだ有利子負債を削減して、財務体質の早期改善を図るためだ。調達した資金のうち200億円は、昨年6月に買収したクレジットカード子会社、楽天KC(旧国内信販)の増資引き受けに充て、残る880億円は米ネット広告大手のLinkShare買収や東京放送(TBS)株取得のために大きく膨らんだ借入金の返済に充てるという。
この大型公募増資の発表を受けて、翌日2日の楽天の株価は、朝方売り気配でスタートし、午前9時20分に前営業日比4000円安の9万3200円で寄り付き、一時は同5300円安の9万1900円まで売り込まれ、終値は同3400円の9万3800円となった。日足株価チャート的には三角もち合いを下放れると同時に75日移動平均を割り込んで、目先的な株価について弱気のシグナルが点灯している。
準大手証券のエクイティ部では「発行済み株式数の10%近くに相当する大型ファイナンスを実施することは、1株利益の希薄化を招くことからマイナス材料といえる。ほかの多くの企業が設備投資など“前向き”なファイナンス使途が目立ち始めているなかで、借入金の返済が主要使途というのが投資家にマイナスの印象を与えていえるようだ。4月新年度以降のTBSとの提携協議を有利に進めるためにも、財務体質の改善を早急に進めたいという御家の事情もあったのではないのか」としている。
楽天の2005年12月期の連結最終損益は、2000年の上場以来初の194億円の黒字となったものの、これは傘下のネット証券や昨年6月に買収した楽天KC(旧国内信販)の業績好調によるところが大きい。また、これまで一度に特別損失に計上していた企業買収に伴うのれん代(買収金額と買収した企業の純資産額の差額)の償却方法を変更したことも寄与している。ただ、2006年12月期の業績見通しについては、不確定要素も多く、予断を許さない状態となっている。
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